マール視点から始まって中世のごたごたには関与せず現代に戻った後はスマホを持ってないクロノな展開
山を降り、見覚えのない村まで行くと、魔族達は追いかけるのを諦めた様で…。
「王妃様!?」
行方不明だったリーネ王妃とマールが間違われる。
「王妃様! ご無事でなにより…」
兵士は大声出し、王妃の発見を周囲に知らせた。
10名程の兵士が集まり、マールの前に跪いた。
マール達が戸惑っていると、兵士が一人の老婆(侍女)を引き連れてきた。
侍女「一体今まで、どこに行ってらしたのですか! 王宮は大騒ぎですよ!」
「しかもそのお召し物はなんですか! まるで殿方の様な格好…。ドレスはどうなさったのですか!」
侍女はマールをリーネ王妃だと勘違いしていた。人違いだと説明するが、侍女は高齢故にて耳が遠く、マールの反論に聞く耳を貸さなかった。
「ところで、隣におる者は一体…まさか! 王妃様を誘拐した者か!! この者を捕らえよ!」
兵士達がクロノを囲み腕を掴んだ。マールはそれを止めようとするが…
兵士「王妃様、申し訳ありません。この者、魔族が人間に成りすまし、王妃様を拐かしておるのやもしれませぬので…」
魔族とは何かをマールもクロノも知らない。訳が分からないまま連れていかれるクロノ。
マールは力ずくでクロノを開放しようとするが侍女がマールにしがみつき邪魔をする…
堪忍袋のおがきれたマール。侍女に手をあげようとすると、カエルが腕を掴み、侍女とマールを引き離した。
侍女の耳元でカエルが説得を始めた。
「この方は…王妃様ではない…」
「はあ? 何を申している? どこからどう見ても王妃様ではないか。」
「合言葉の確認はしたか?」
この世界の人々は、魔族が人間に変幻し、成りすまして騙してくる場合に備えて、親しい間柄同士で合言葉を決めていた。王妃専属の侍女と、王妃専属の護衛であるカエルは、リーネが本物かどうかを知る為の合言葉を知っている。
侍女はマールに合言葉を問うものの答えられず、マール達は誤解が解けた。
「しかし…王妃様に似過ぎておる…。これでは余りにも紛らわしい…」
侍女はマールの顔をジロジロと見ると髪留めを外した。
「その姿でいるように。」
侍女が去ると、集まっていた兵士達も潮が引く様に去っていく。
カエル「二人とも誤解して済まなかった。あの者は目も悪く、耳も遠くてな…。兵士達は王妃様のお顔を間近で拝見した事が無い故に、勘違いしたのだ…」
「私の名はグレン。先程はそなたの身体に失礼な扱いをした。」
マール「誤解が解けたからいいけど、一体何があったの?
カエル「実は王妃様が今朝から行方不明なのだ。我々は王妃様の捜索にあたっているのだが全く手掛かりが無く…」
マールに似た王妃が失踪し目撃情報すらない。そんなことより、ここはどこで何なのか、その疑問で頭が支配されていた。
ーリーネー
その頃リーネは寝台に寝かされていた。その回りにはいくつかの魔方陣が描かれていて呪術の最中だった。それが完成すればリーネは魔族に姿を真似される。魔族によるガルディア乗っ取り作戦であるが、リーネからはまだ合言葉を聞き出していないので生かされている。
カエル『今朝、王妃様はマノリア修道院に礼拝に行く予定だった。』※大臣に成り済ましたヤクラによって王宮から拐われた設定であったはず。ならアレンジクロノにて森で拐われるのは間違い。
マール『だったらそこに隠れているのじゃない?』
カエル『隠れる?しかしなぜ??』
マール『そりゃ、王家のしきたりとか公務とか色々と嫌な事があったんだよ(私もだし)』
カエル『家出したということか? 置き手紙も残さずに?』
マール『(私もそうだったな…)そういうことも、ありうると思うよ』
カエル『しかし、護衛も連れず、一人で城を抜け出すなんて…そんな危険な事をまさか…しかも誰も気付かないとは…』
マール『そこは職務怠慢ね。きっと修道院が王妃様の悩みを親身に聞いてくれるものだから、王妃様、そこを心の拠り所にしちゃったんだよ、きっと。』
カエル『なるほど…。我等には知らぬような王族ならではの悩みがあるということか…』
マール『そうそう。』
カエルは納得しマールに感謝するとマノリア修道院へと向かった。
その場に取り残されたクロノ達。待ってたらルッカが迎えに来てくれてそのまま現代に帰れるシナリオが用意されていた。めでたしー
~マノリア修道院~
カエルは叫んだ
「王妃さま! 王妃様はここにおられるのではないのですか! 王宮で何があったかは知りませんが、王様はとてもご心配されておりますよー!」
シスター長「カエル殿…。私達が嘘をつき王妃様を匿っているというのですか?」
カエル「いえ、決してその様なつもりは…。ただ王妃様に特別な悩みがあり、こちらに避難しているだけなら、王様も安心なされますでしょうから…」
〜教会の外〜
カエル「教会というところは頑固な場所だな…。『王妃はいない。でも中は見せない!』と一点ばりだ。逆に怪しすぎするぞ…」
このままおめおめと帰る訳にもいかない。カエルは教会の屋根にジャンプし、古い屋根板を一つ外した。屋根裏に入り、足元の隙間から中の様子を確認した。
カエルの足元にはリーネ専属の護衛(深夜から早朝担当)騎士がいた。
周囲に盗賊団は見当たらず、彼は縛られ監禁されていた。
カエルは足元の板をこじ開け、一階へと降りた。
「おい、ビックス! リーネ様はどうした?」
「たぶんリーネ様はこの建物のどこかに…。気を付けろ…。ここにいる奴らは全員魔族だと思え…」
「魔族だって!? 合言葉はどうなっている?」
「…どいう訳か、奴らは我らの合言葉を知っている…」
ビックスは傷だらけだった。逃げられない様に足を潰され、喋れない様に喉も潰されていた。
カエルとの意思疎通は手話を使っての事だった。
「待ってろ! 今すぐを応援を呼ぶ。」
人間サイズのカエルが現実にいたとしたら、どのくらいの速度で走れるだろうか?現実のカエルは目にも止まらぬ速さでジャンプすることがある。。それが人間サイズであれば時速100kmを越えて動けてもおかしくない。
カエルはあっという間に救援部隊を引き連れてマノリア修道院を包囲した。
ー現代 千年祭ゲート前ー
クロノ達が元の世界に戻ると、強いライトに照らされ、前から見えなくなる。
目を凝らすと、ヘリが目の前にあり、ガルディア軍人が二人立っている。その間から白ひげの爺さんが現れた。
「じい、どうしてここが…
「マール様、探しましたぞ…。ささ、おうちへかえりましょうぞ」
「じい…私…
お爺ちゃん子のマールは泣きながら抱きついた。
マールはバイバイと手をふってクロノ達に別れを告げて去っていった。
~ヘリの中~
「ところでマール様、次元の穴に吸い込まれた先は何処に繋がっておられたのですかな? じいはマール様が帰って来られてからというもの、その事ばかり考えてしまうのです。」
「ルッカにはゲートの先を内緒にしろって言われたのだけど実はね、私達、異世界に行ってたの。信じられないと思うけど私達400年前のガルディアで魔族…といっても私は見た訳じゃないのだけど、クロノ達が魔族と戦って私を助け出してくれたの。』
「ま、まぞく? まさかその様なものが、過去の世界に居るなんてことある訳が…
「そうよね…。だからきっとあの世界はこの世界とは違う、パラレルワールドみたいなものだと思うの。でも凄くない? 異世界なんだよ? ファンタジーだよ。』
大臣は震える手で何かのスイッチを押した。どこかに緊急のメッセージを飛ばした。
「ま、マールディア様…落ち着いて聞いて欲しい事があるのですが…。決して誰にも言ってはならぬと約束できますかな…。
爺は真剣な顔で過去の歴史をマールに語った。400年前にガルディア及び世界の殆どの国々が、人に化ける西側魔族によって侵略され統治されたこと。魔族は人間を食料として確保する為に、魔族の存在そのものを歴史から隠蔽し、表面的には人間にとって暮らしやすい社会を作ったこと。
西側魔族は人間を独占する為に、東南北魔族の情報を人間側に売り渡し、人間と共にそれらの魔族を滅ぼした事等を説明した。
この隠された歴史は権力ある一部の人間しか知らず、もし、知るはずのない者がこの話しを公に語るなら、その者に身に危険が及びかねず。マールも例外ではなく、爺は決して語らない様に念を押した。
「ちょっと待って、じゃあ、クロノやルッカはどうなるの? 絶対に魔族の事を喋らない様にこの事を教えてあげないといけないんじゃ。
「安心して下さい。今、王家の秘密の組織がクロノさん達を保護しに向かっております。」
だが爺は嘘をついていた。クロノ達を保護するつもりはなく魔族に生け贄(食糧)として与えるつもりだった。口封じ兼貢ぎ者として一石二鳥。クロノとルッカ、その家族まるごと狩り取ろうとしていた。そうとは知らぬマール
ー王家の邸宅にてー
「もう! これだから王族なんていやなのよ!」
マールは外出許可を申請するもののその対応は遅かった。邸宅の門は固く閉ざされ、マールの意志で外に出る事ができない。公務のスケジュールで明日には出られるかもしれないが、クロノが心配で気が気ではなかった