マールと一緒に下山後、マールが死んで、いろいろな展開
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↑の続き
山を降り、見覚えのない村まで行くと、魔族達は追いかけるのを諦めた様で…。
「王妃様!?」
行方不明だったリーネ王妃とマールが間違われる。
「王妃様! ご無事でなにより…」
兵士は大声出し、王妃の発見を周囲に知らせた。
10名程の兵士が集まり、マールの前に跪いた。
マール達が戸惑っていると、兵士が一人の老婆(侍女)を引き連れてきた。
侍女「一体今まで、どこに行ってらしたのですか! 王宮は大騒ぎですよ!」
「しかもそのお召し物はなんですか! まるで殿方の様な格好…。ドレスはどうなさったのですか!」
侍女はマールをリーネ王妃だと勘違いしていた。人違いだと説明するが、侍女は高齢故にて耳が遠く、マールの反論に聞く耳を貸さなかった。
「ところで、隣におる者は一体…まさか! 王妃様を誘拐した者か!! この者を捕らえよ!」
兵士達がクロノを囲み腕を掴んだ。マールはそれを止めようとするが…
兵士「王妃様、申し訳ありません。この者、魔族が人間に成りすまし、王妃様を拐かしておるのやもしれませぬので…」
魔族とは何かをマールもクロノも知らない。訳が分からないまま連れていかれるクロノ。
マールは力ずくでクロノを開放しようとするが侍女がマールにしがみつき邪魔をする…
堪忍袋のおがきれたマール。侍女に手をあげようとすると、カエル人間が腕を掴み、侍女とマールを引き離した。
突然の化け物に驚いてフリーズしたマール
侍女の耳元でカエルが説得を始めた。
「この方は…王妃様ではない…」
「はあ? 何を申している? どこからどう見ても王妃様ではないか。」
「合言葉の確認はしたか?」
この世界の人々は、魔族が人間に変幻し、成りすまして騙してくる場合に備えて、親しい間柄同士で合言葉を決めていた。王妃専属の侍女とカエルは、リーネが本物かどうかを知る為の合言葉を知っている。
☆
侍女はマールに合言葉を問うものの答えられず、マール達は誤解が解けた。
「しかし…王妃様に似過ぎておる…。これでは余りにも紛らわしい…」
侍女はマールの顔をジロジロと見ると髪留め出してポニーテールにさせた。
「その姿でいるように。」
☆
侍女が去ると、集まっていた兵士達も潮が引く様に去っていく。
カエル「二人とも誤解して済まなかった。あの者は目も悪く、耳も遠くてな…。兵士達は王妃様のお顔を間近で拝見した事が無い故に、勘違いしたのだ…」「先程はそなたの身体に失礼な扱いをして、すまなかった」
紳士なカエル人間。最初は見た目に驚いたが、ここにきて直ぐに化け物に殺されかけた事を思い出すと、なんてこなかった。平静になるマール。
「誤解が解けたからいいけど、一体何があったの?」
「実は王妃様が今朝から行方不明なのだ。我々は王妃様の捜索にあたっているのだが全く手掛かりが無く…」
マールは学校の授業で習った気がした。リーネ王妃の行方不明事件。
当時、リーネ王妃は盗賊団に誘拐され、教会に監禁されていたとされる。教会は盗賊に占拠されていてリーネを人質にとり、大臣に王宮から金品を持ってくる様にと交渉するも王国兵の活躍で無事に解決する。だがこの世界はマールの知る世界とは異なる。歴史に魔族は登場しないし、カエル人間についてもだ。
何がどうなっているのか。
自身がタイムスリップしたのか、それとも異世界に来てしまったのか、それを確認する必要があった
「王妃様の顔立ちはそなたと似ている。もし見つけたら至急、兵舎まで連絡を…」
リーネが盗賊に監禁されていると言ったとして、なそれを知っていて今まで通報しなかったのかと問われると、あとあと面倒になりそう。
「私…王妃様を見たかもしれない。」
「それは本当か!」
「ええ、教会で…」
「教会とはいえばマノリア修道院のことか? あそこには既に行ってみたのだが…」
「教会は修道女しか入れない部屋があったはず…そこに隠れているということは?」
「リーネ様が教会に隠れる? なぜそのようなことを…」
「そりゃ、王家のしきたりとか公務とか色々と嫌な事があったんだよ(私もだし)
『家出したということか? 置き手紙も残さずに?』
『(私もそうだったな…)そういうことも、ありうると思うよ』
『しかし、護衛も連れず、一人で城を抜け出すなんて…そんな危険な事をまさか…しかも誰も気付かないとは…』
「きっと修道院が王妃様の悩みを親身に聞いてくれるものだから、王妃様、そこを心の拠り所にしちゃったんだよ、きっと。』
『なるほど…。我等には知らぬような王族ならではの悩みがあるということか…』
カエルは納得しマールに感謝するとマノリア修道院へと向かった。
マールもその後を追いかけた。念の為、盗賊と出くわす事に備えて武器を探した。
街の各所に火の着いてないタイマツ棒があり、マールはそれを手に取った。
☆
カエル「やはり王妃様は今日はまだ、お祈りに来ていないか?」
シスター長「はい、今日はまだ一度も…
カエル「…。すまないが…奥の部屋を見せて貰う事はできないだろうか?
シスター長「なぜその様なことを…」
カエル「見間違いかもしれぬが、王妃様が今日ここに来たという目撃者がいるのだ。念の為に中の確認を」
シスター長「修道院内は修道女しか入れぬ場所、たとえ王様であれど、通す訳にいきません。」
カエル「それは判っておるのだが…。
カエルは叫んだ
「王妃さま! 王妃様はここにおられるのではないのですか! 王宮で何があったかは知りませんが、王様はとてもご心配されておりますよー!」
シスター長「カエル殿…。私が嘘をつき王妃様を匿っているというのですか?」
カエル「いえ、決してその様なつもりは…。ただ王妃様に特別な悩みがあり、こちらに避難しているだけなら、王様も安心なされますでしょうから…」
〜教会の外〜
カエル「教会というところは頑固な場所だな…。『王妃はいない。でも中は見せない!』と一点ばりだ。逆に怪しすぎするぞ…」
カエルは教会の屋根にジャンプし、古い屋根板を一つ外した。屋根裏に入り、足元の隙間から中の様子を確認した。
カエルの足元にはリーネ専属の護衛(深夜から早朝担当)騎士がいた。縛られ監禁されている。
カエルは足元の板をこじ開け、一階へと降りた。
「おい、ビックス!何があった!」
ビックスは傷だらけだった。逃げられない様に足を潰され、喋れない様に喉も潰されていた。
カエルとの意思疎通は手話を使っての事だった。
ビックスはここで一ヶ月以上監禁されていた。だがビックスが行方不明になっているという情報は無かった。つまりビックスに成りすました魔族がいるということ。
カエルはこの件を早急に騎士団に伝えなくてはならなかった。ビックスは合言葉は喋らなかったが、催眠術の様な技にかかり、合言葉がバレたかもしれないという。そんな事ができるとしたら、恐らく、この施設にいる修道女は全て魔族の可能性が高い。
カエルは魔王の呪いの影響から時速200kmで走れた。救援部隊を呼ぶのは速いが、結局自分の足が早すぎて、先に一人で潜入することになる。
カエルが高速でマールの側を行き来した。そとき、マールは自身の姿が透明になっている事に気付いた。
消えかけている。
リーネが自身の先祖にあたる者だったとしたら。もし、リーネの身に危険が及べば、自身は存在しなくなるかもしれない。だから消えようとしているのかもしれない。
マールはクロノに伝えた。自身の素性と、これからリーネが死んで自分も消えるかもしれない事を
クロノは木を登ろうとした。教会の横に立っている木から屋根に飛び移り、カエルの様に内部へと浸入しようと試みた。
「危険な事はやめて!」
マールはクロノの裾を引っ張り止めた。
マールは教会の裏に回った。玄関はあるが、現代の様にガラス窓の様なものはない。だが枠らしきものは複数あり板状の扉が開いていた。
日中の光がある程度屋内に差し込むとはいえ、外から中の様子を知るのは近付かなければ難しい。
マールが中を気にしている様に魔族もまた外にいるマールを見ていた。
「「
「もし、全てが魔族だったら…」
マールの姿は刻一刻と透明度が増していた。
「消えるくらいならいっそ!」
マールは玄関の戸を叩いた。
敵は警戒している。玄関の戸口は開けず、窓から半分顔を出してくるだけ。マールは玄関からの浸入を諦め、窓から勢いよく中に飛び込んだ。
マールのお願いで離れた所から見守っていたクロノ。マールの突然の浸入に焦った修道女は魔族の姿へと戻り、マールの後を追いかけた。
突然の奇襲に驚いた魔族達は奥へ進むマールに対応しきれず、取り逃がしていく。
魔族達は緊急事態を知らせる雄叫びを上げた。
○
マールはどんどん消えかけていたが、入り組んだ教会内で、進む方向を次第で消える速度が低下していた。。つまり正解の道、リーネのいる方向を選べば身体は消えなかった。
リーネが監禁されている部屋へと到着したマール。
リーネの側には大臣に変幻したヤクラがいた。
ヤクラは一瞬驚いたが、【棒を持った女が一人だけ】という状況に安心していた。
☆
人間に変幻していた魔族達は姿を表し、マールを追いかけた。リーネが監禁されている部屋に一斉に向かい、異変を感じたカエルはその後を追った。
敵の背後から攻撃を加えるチャンス。カエル無双が発した。カエルの跳躍時速200kmで次々と魔族をなぎ倒す。マールが囮の様な存在になったお陰でリーネの居場所が判った。
カエルがリーネの元へ駆けつけたとき、マールは殺されていた。
カエルと相対するヤクラ。
体長3メートル級のゴキブリ様魔族に人間サイズのカエルでは本来勝負にならない。
だが、部屋の広さは限定的。ヤクラの素早さはもっと広い場所で活かされる。
カエルの俊敏さがここでは有利
出入口の構造上、ヤクラなサイズでは出ることはできない。壁を突き破ることも、助走距離が足りなくて不可能だった。
200年先の未来でならダイナマイトも存在し壁を突き破って逃げれたかもしれない。
それができないヤクラはカエルの剣技に時間をかけて削られていくだろう。
ヤクラはカエルを見るなり勝てないと察知した。王国騎士のエースであるカエルの強さは魔族世界でも有名だった。
ヤクラはリーネをくわえ部屋の出口で大臣の姿に変身した。リーネを人質にこの場を逃げようとしたその時、背後からクロノの一撃が入った。
カエルに意識を向けすぎたせいか、大きな隙がうまれていた。
人間に変身している間は著しく防御力が落ちる設定
ヤクラは気絶した。
☆
リーネは助かるもののマールが助からない展開。
ヤクラの思惑は阻止されたが、ヤクラの子孫はヤクラ以上に巧妙にガルディアに潜入していく。
主要な要人は全て魔族が成り済まし、影から人間社会を支配していく。人間は影ながら肉食魔族の餌にされる。
ただし、この歴史はクロノ達が過去に関与する前から成立していた。
人間に成り済ませる魔族は、ヤクラと同じように考える。世界各国で似たような魔族支配が起こると、魔族間での戦争が勃発した。
無意味な戦争は、最終的に一つの結論に達した。【この世界から魔族の歴史を消し、人間にとって住みやすい環境を作ろう】
魔族に関するありとあらゆる歴史書は燃やされ、催眠術で人の記憶からも魔族は消された。人々に平和な記憶だけが埋め込まれ、4数世紀の間に人間の人口は10倍以上に増加した。それがクロノ達が生まれた世界だった。
人間を効率よく得るには奴隷にして増やすよりも、社会から魔族が居なくなる事が効率的だったのだ。人は魔族が存在するとは知らずに生きていた。知らずに家畜にされていた。
平和な世界で生きてたら、ある日突然人生が終わるシステム。
家畜が家畜たと気付けないシステムは、人間が家畜やっている事と違いはなかった。魔族の道徳観念では人間を家畜とすることは全く罪にならなかった。
☆
マールの遺体を現代に持ち帰る訳にはいかなった。しかし後にマール失踪の容疑かけられたルッカとクロノは逮捕勾留される。次元に穴に吸い込まれる姿をマスコミが撮影していたのが証拠となり、一部始終を説明することになる。
時を越えられる仕組みは【マールが死ぬ前に助けられるかもしれない】という期待を残した。
時を弄る行為は歴史とって非常にデリケートな問題になりうる。警察当局も政府も時空移動は容認しなかった。
とはいえ技術を知るルッカは存在している。時を弄りたい者はルッカを誘拐し、脅迫すればいいだけである。ルッカを誘拐できなくても、知り合いを誘拐して脅せばルッカをおびきだせる。
☆
ルッカとその知り合いは悪人の手が届かない様に政府が保護。南西の諸島エルニドに幽閉されることになる。