クロノファン2022

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データベースノア。2030年にラヴォス。時の最果てと中世のビネガー

ロホはコンピュータを起動した。
データベースノアXYという画面が表示された。
 

「私はデータノアXY、データベースに情報をインプットする場合は画面のXをタッチし、。 データベースから情報を引き出したい場合Yをタッチしてください…

ルッカ「これは情報端末みたいね。今、歴何年かしら?」

 
ノア
「現在、西暦2030年です」

ルッカ『西暦2030年って…一体どういうこと?私達がいた時代から10年も経ってない??』

ノアによると荒廃した原因はラヴォスという生物によるものだった。ラヴォスは戦国時代に南の魔族によって召喚され、凡そ400年の間、地中の中で眠っていた。2021年9月1日に目覚め、大きな地震と共に地上に這い出ると、高熱の光で世界を焼き付くした。

99%の人々が一瞬で消滅し、残りの1%も殆どが死に絶えた。シェルターに避難していた人々は食糧資源を奪い合って殺し合いながら最終的に大きな感染症によって絶滅したと推定される。後に判明したそのウイルスはラヴォスから放たれた霧状物質と判明した。

マール『う、ウイルスって私達はここにいて大丈夫なの??』

ノアは安全だとは答えなかった。

マール
「ちなみに魔族はどうなったの?

ノア
「魔族も絶滅しました」


ルッカラヴォスは今どうしているの? 今でも暴れ回っているの?」


ノア 「ラヴォスは地殻へと潜りました。ラヴォスは現在もまだ地殻の中にいると想定されます。」


ルッカ
ラヴォスって何なの? まるで最後の審判。破壊神みたいじゃないのよ。それを召喚した魔族もさぞ想定外だったでしょうね」

マール
「結局、魔族って一体なんだったの?」

ノア
「魔族とは人間と共に遥か昔から地上に生息していた生物。1600年代まで人間文明と不毛な戦争を行った後、西側の魔族王フリューゲルスが北西大陸イギリス首都を制圧すると人間との共存を始めました。」

マール『共存??』

ノア
「きっかけは9年前による偶発的タイムゲートの発生でした。当時19歳の女性発明家が作り出したテレポート装置に障害が発生し、それが原因で現代文明が過去に混入、魔族が知恵をつける結果となり…
…当時、偶発的タイムゲートが発生し過去に行った者は三名と魔族種一体…」


ノアの説明によると千年祭でのテレポートの実験を人間以上に知能の高いコウモリ魔族種が見ていた。その魔族種はルッカがタイムゲートの検証実験中に入り込み、中世時代の魔族達に戦争や戦略的知恵を授けた。

影響を受けた魔族王フリューゲルスの主導で人間に擬態できる種族が人間世界を制圧した。

 

ルッカのショックは大きかった。自分のした発明がきっかけで現代の法秩序はおかしくなり、沢山の人間が魔族の犠牲になった。だとしてもどのみち千年祭が終わる頃にはラヴォスにより世界は終わるのだ。過去失態、それ以前の大きな問題に呆然とするしかなかった。





「過去に行って魔族や魔王と戦う…」

マールがぼそっとつぶやいた。


ルッカとクロノに沈黙が続いた。

ルッカ(それを本気で言ってるの? 戦国時代に行くという意味だよ? 命が幾つあっても足りないわよ。) 

 

マール
(確かに…実際問題無理だよね…)


三人は心の中でぶつぶつと考えていた。

ルッカ
「とりあえずクロノを中世にでも連れて行ってから考えましょうか。」

マール
「そうだね。指名手配されているクロノが安全に暮らせそうなところ、そこしか無いもんね…」


クロノは魔族がいる戦国時代が怖かった。いざという時の為、魔族の弱点になりそうな情報をノアに聞いた。


クロノ達は魔族の弱点を知った。

ー魔族の弱点ー

1、戦国時代の魔族は総じて知能の低い者が多く、挑発等で冷静さを失うと行動に大きな隙が生じる。
2、人間に聞こえない特定の周波数帯の音が苦手な種族が多く、音波攻撃が有効。
3、多くの種は寒さに強い一方で熱に弱い。(化石調査から氷河期に人類文明が衰退している隙に縄張りを広げたとされる。)
4、忍耐力がない。酸欠や水により呼吸を奪えると効果的
5、魔族を弱らせる聖剣、グランドリオンを使う。(詳細不明

クロノが脱走して5日目、そろそろ警察の包囲網も弱くなっているはず。三人はどうやって千年祭のゲートをくぐるか話合った。

「そういえば、この部屋の扉が開かなかったけど、通電した今なら開くのかな?」

マールがそっと触れると扉は開いた。
中には何もない。6畳程度の広さがあるだけ。

ルッカ「これって最初に開けた扉とまったく同じ文様をしているわね…何か特別な意味でもあるのかしら?(まさかここにも同じ様にゲートがある訳じゃないわよね?)
「え!? 本当なのこれ? 冗談じゃなくて本当にゲートがある!扉の文様の意味はもしかしてタイムトラベラーに向けたメッセージ!?」

目を凝らして見なければ気付けない空間の揺らぎがそこにあった。

マール「メッセージ?

ルッカ
「ええ、タイムトラベラー同士だけが判る共通のシンボルとでも言えるかしら。」


ルッカはドローンでゲートの先の安全性を調査した。

「で、できない?」
ゲートは開いているものの、ドローンはゲートの中に吸い込まれなかった。

今までは問題なくできていた。ドローン自体に問題が有るのか? ルッカは頭を抱えた。

ロボ
「私の出番ですか?」 

ルッカ
「行ってくれるの?」

ルッカはゲートホルダーの使い方を説明をした


ロボはゲートに吸いこまれた。


3分程経過し、ゲートが開きロボが戻ってきた。

ロボ

「不思議な場所でした。ゲート先にいくつものゲートがあって、いろいろな時代に繋がっていマス。」 


ルッカ
「え? それマジ!? 

マール
「なんかオモシロそう!」

ロボ
「間違いありません。中は広い部屋になっています。休憩可能なソファーや椅子があります」


ルッカ
「ノア、私達以外にもタイムトラベラーは存在するの?」

ノアにはタイムトラベラーに関する情報は何もインプットされていなかった。

ルッカ
「偶発的タイムゲートの存在は知ってるんだから、タイムマシンの研究くらいしてないの?」


ノアはタイムマシンに関する情報を吐き出したものの、タイムマシンが作れなかった不毛な研究資料しか吐き出さなかった。

ルッカ
「ちょっとどういう事? 私が生み出したゲートホルダーの情報くらいあるでしょ? 未来人もそれ作ってないと、ゲートには入れないのだから」

ノアにはゲートホルダー関するデータはインプットされていなかった。

ルッカ
「まさか、私の技術が未来に伝わらないってことかしら…

マール
「もしかして死ぬ?」


ルッカ
「私のテレポッドの技術はどうなったの? ワープ構想のロジックは? 未来のエネルギー資源解決問題は?」

ルッカのテレポート技術は論文データとして残っていた。だが実用化されていなかった。
テレポートに見合うエネルギーの効率性が割に見合わず実用化に向かなかった。

ルッカ
「そんな馬鹿な! テレポートによる物質同士の重ね合わせの衝撃力でテレポートに使ったエネルギー以上のエネルギーが生み出せる筈でしょ! 私の無限エネルギー構想の論文はないの!?」

ノアはルッカの求める情報を吐き出さなかった。

ルッカ
「無能な未来人め。だったらこの時代にインプットしてやる!」

ルッカはまだ無限エネルギーの論文を書いていなかった。
クロノ達はしばらく、ルッカの仕事が終わるのを待った。


ルッカ
「よし! これで完璧! じゃあ、みんな! ゲートの中に入ろうか!」

クロノ達は不安と好奇心が入り交じりながらゲートの中へ飛び込んだ。

-

ー時の最果てー

ゲートを抜けた先に部屋があった
部屋の中にはいくつかのゲートがあり、部屋の縁から見える外の景色は無限に続く黒の世界。

部屋には扉があり、その扉を空けると、もう一つ部屋がある。
部屋の真ん中に黒いスーツをまとった老人が鼻ちょうちん膨らませながらスヤスヤと寝ていた。

マール「もしもしー」

マール
「ここは一体なんですかー」

老人
「おや、こんなところに人がくるなんて珍しいのう。ここは時の最果て、まあ、ゆっくりしてけ。」

ルッカ
「え? それだけ? 時の最果ての説明は?」

老人は答えなく、また深い眠りについた。

マール
「どうするクロノ? 叩き起こす?」


時の果ての人
「そうじゃ。お主ら行く前にそこの扉に入ると良いよ。」 

そう言って、老人はまた眠り始めた

クロノ達は扉を開けた。

部屋の中央に小さな生き物がいた。

「お、久し振りのお客さんね。私の名前はスペッキオ。スペッキオの周囲を壁にそって3回まわると良い事が起きるよ。」 

スペッキオはそういうと、黙った。
話しかけても同じ言葉を繰り返した。

クロノ達はまわった。
一周するとスペッキオが小刻みに揺れ始め、二周目で強く揺れ、三周目ては目にも止まらぬ速さで揺れた。


「成功だよ。これで君たちは魔法が使える様になったよ。」 

クロノ達は言ってる意味がわからなかった。

「そこの大きなのは多分無理ね」
スペッキオはロボを指した。

「とりあえずスペッキオを指差してサンダーって叫んてみ。」

クロノ達はサンダーと叫んだ。
クロノの指先が光り、小さな稲妻がスペッキオに落ちた。

「君が使える魔法は天属性だね。今カミナリ出した君は、そういう魔法を覚えやすい体質だからね。じゃ、君は終わり、今度は君以外の人がファイアーて叫んで僕に指差してね。」


ルッカの指先が光り、炎がスペッキオに直撃した。「君が使える魔法は火属性だね。今火出した君は、そういう魔法を覚えやすい体質だからね。じゃ、君は終わり、今度は君以外の人がアイスて叫んで僕に指差してね。」

マールの指先が光り、スペッキオが氷ついた。「君が使える魔法は氷属性だね。今スペッキオを凍らせた君は、そういう魔法を覚えやすい体質だからね。じゃ、これで僕の講義はおわり。」 

クロノ達は更に戸惑った

「あと今のはスペッキオがチカラを貸したデモンストレーションみたいなものだから、実際に誰かに向けてやると今程上手くはいかないと思う。
でも練習するときっと上手くなるから。じゃあ、僕もおやすみ〜」

スペッキオは一方的に説明したら寝てしまった。

起こすと、魔法の練習がしたいかどうかを聞いてきた。

「デモンストレーション版がいいか、それともリアルがいい?」

クロノ達はリアルを求めた。

サンダー、ファイアー、アイスと叫んだが、何も出なかった。
もう一度叫んだ。しかし何も出ない。

「スペッキオが思うに、何も出ないときは自分の腕とか体に向けてやるといいよ。」

三人はそれぞれ、自分に向けて唱えた。
クロノは身体が少し痺れ、ルッカは身体が熱くなり、マールは身体の温度が低下した。

「スペッキオに向けてもう一度やってみて。あと身体の調子に意識を集中してやってみてね。疲れみたいなのを感じとれたら成功だよ」 

三人はスペッキオに向けて魔法は放った。スペッキオに変化はないが、少し疲れを感じた気がした。

「その感覚が大事だよ。疲れる感覚を覚えて、今度はどっしり疲れる感覚を想像しながら、魔法を唱えてみて。」

三人はスペッキオに向けて疲れるイメージで魔法を放った。スペッキオに電流が走り、軽く燃え、霜がついた。三人はどっしりとした疲れを得た。

「なんとなくわかった? 魔力と魔法の仕組み。訓練次第で色々な事ができるから、また遊びにきてね。あと無闇に人に向けて使ったらダメだよ」

三人は色々と言いたいことがあったが、頭の整理が追いつかなかった。

ルッカ

「ありえないわ。いや、ありえるかもしれないけど、やっぱりないわ!

ルッカは一人部屋に残りスペッキオに魔法をぶつけていた。

「科学以外は信じない!」
そうは言うもの、これまでの異常な体験からありえないことではないと、内心思い始めていた。


スペッキオ『やり過ぎると疲れるから注意ね』

 
ルッカ『どういう現象よ!これ!?』

スペッキオ『スペッキオにも良くわかんない。いつからできたのか、なぜできたのかも』

 

ルッカ『これって科学的にいったらどういう現象よ? 無いところから発生する炎なんて、100歩ずってありえるとしても炎の原材料は酸素よ。魔法ファイアが着火をコントロールしているとしても炎の制御に必要なのは酸素。酸素量をコントロールすることが重要でありその酸素は一体どこから? 酸素をワープさせたということ? それとも周囲にある空気から酸素だけを取り出して凝縮させているということ??』
 
ルッカはスペッキオに聞いたが、理解できていない様子だった。

スペッキオ『魔法には個性があって、その人が使える属性というのが決まってるんだ。ルッカは炎系の魔法が使えるから炎が得意なんだよ』


科学的にいえば炎の制御は酸素を制御することだ。厳密には得意なのが酸素制御ということになる。

ルッカは気になっていた。酸素をワープさせているのか、周囲の酸素を集めているのか、密閉空間を作って実験したい。もし酸素ではなく、水素のみ選んで集められるなら爆発させる魔法も作れることになる。

スペッキオ
「爆発の魔法が覚えたいの? だったら、フレアって叫んでみて。

叫んぶと、スペッキオの頭の上が光り、爆発した。スペッキオはその衝撃にビックリし、ルッカは衝撃で転げそうになる。

スペッキオ
「という訳で、使うときには注意しないといけないの。

ルッカ
「もっと火力のある技は使えないの?

スペッキオ
「練習すればできると思うよ。あとゴハン食べて寝て


ルッカには他にも疑問があった
デモンストレーションのとき、ファイアを使ったら、火は自身の目の前から生まれ出てスペッキオまで駆けていった。
途中に障害物があったらどうなるのか。

スペッキオ
「障害物をすり抜けていくよ。」

ルッカ
「障害物をすり抜ける? 避けるのではなく? すり抜けるの? つまり、火の絵がそこにありながら、火の性質なく、座標の元で火の性質になる。火が飛んでいく光景なんて意味はない、指定した座標点で初めから燃えれてれば無駄がないのに。なんでそんな事になってるの?」

スペッキオ
「スペッキオは難しすぎて意味わかんないけど、とにかく障害物には当たらないよ」

魔法を使って指が光る事も無駄なことであるが、それがある意味ってなんだろう。

「スペッキオに言われてもわかんない。困る」

ルッカ
「光を出さないで、、あるいは魔法を唱えないで出せる?」

スペッキオ
「それは多分、無理なんじゃないかな、やる意味もないと思うけど

ルッカ
「じゃあ、光を出す魔法や光を消す魔法は使える?」

スペッキオ
「ライトってのがあるけど、ルッカは属性違うから何も起こらんよ。光を消す暗闇の魔法もあるけど、使えないと思うけど」


「デモンストレーションならできる?」

スペッキオ「できるよ? やってみる?」


ルッカがライトを唱えると部屋が明るくなった。
気が少しだが断続的に抜け続ける感覚。

スペッキオ
「スペッキオがチカラを貸してるとはいっても魔法使ってる主がルッカだからね。しかたがない。」

だけど気を抜ける感覚がファイアの時と違い、頭から下に向かう感覚だった

ルッカはデモンストレーションを解除し、頭から下に気が抜ける感覚をイメージしてライトを唱えた。

微かに光が出た。

スペッキオ
「ど、どういうこと? ルッカは光属性とか使えない筈なのに。」

「成長して魔力が高くなると、色んな属性魔法が少しは使えるけれど、今のルッカの魔力量では何も起こらないのが普通なんだけど…」


検証してみると、体から気の抜ける方向、前後左右上下により、出せる魔法の種類が増えた。
たとえば
上から下へが光属性
下から上が闇属性
前から後に炎
後から前に氷
左から右に天属性
右から左に冥属性

これをクロノで検証すると
上から下へが光属性
下から上が闇属性
前から後に天
後から前に冥
左から右に氷
右から左に炎


ルッカ
「水の属性とかないの?


スペッキオ
「ウォーターってのがあるけど、

スペッキオにデモンストレーションを頼むと、
気の抜ける方向感覚が捉えられなかった。普通にファイアを使うのと感覚が違うのはわかるが、どう違うのか、わからなかった。

ルッカ
「水を吸い取る魔法、つまり乾燥の魔法なんてあるかしら?」

スペッキオ
「ドライヤーのこと? 

検証するとドライヤーもウォーターと同じように感覚の掴み所がわからなかった。
しかしウォーターと同じ感覚とも思えない。


障害物をすり抜けるというエネルギー工学的にみて無駄な演出が魔法の仕組みにプログラムされていること。唱えて光って炎が飛んでいく仕組み。まるで「これから危険な事をしますよ。気を付けてください」というメッセージを飛ばしている様なものである。

魔法とはもしかすると、未来人が生み出した科学技術の様なものなのだろうか。使用上安全性を考慮して、このカタチになったのではと、この時ルッカは思った。

だとしても、納得できない事は山ほどある。

魔族が魔法を使えるという噂は未来のデータベースノアから引き出した情報。
未来人が魔法を生み出したのなら、未来人も魔法が使えるという情報がないとおかしい。だけど魔法を使える未来人なんて情報は無かった。

(安全性が考慮されて作られてる…)


ルッカはクロノを呼び出してサンダーとファイアーをデモンストレーションから同時に唱えた。
同時にそれそれの現象が起きた。

電気を効率良く対象に浴びせるには対象の周りが真空状態にならないといけない。しかし、真空状態は無酸素だから燃えたりしない。
火と電気を連携させて燃えるのであれば、ファイア魔法はそもそも酸素がないので燃えないはず。

【魔法の仕組みは化学的にも物理的にもその法則に即していない。】

アイス魔法の場合、その正体は冷気が発生しているのではなく、対象から温度を奪う性質なのであればファイアとアイスの同時発動は純粋に相殺し合う関係になるだろう。

アイスを先に浴びせて凍らせる。いわゆる凝固作用で対象の体積を下げておき、その後でファイアを浴びせて、解凍し、体積を増やす場合は、どうなるだろうか? 普通に考えれば凍ったものが普通に解凍されるだけだろうが、酸素を火種にしていないのだから熱運動がダイレクトに伝わる筈であり、たとえば空気なら熱膨張爆発するだろう。対象が生き物なら生き物そのものが膨張する。
恐らく電子レンジで凍った肉を急速解凍してドリップする様な現象を起こせる。それも激しいレベルで。

「なるへそね〜、意味わかんないけど今日、スペッキオ、たくさん勉強した。ルッカありがとう」


ルッカ
「ここには私達以外来たことないの?


スペッキオ
「来たような、来てないような、わかんない。

ルッカ
「あなた何時からここにいるの?

スペッキオ
「スペッキオはいつからここにいるんだろう? ずっといる気がするけど、いつからいるんだろうか?」


ルッカ
「じゃあ、あっちの部屋で寝てる爺さんは? いつからいるの?」

スペッキオ
「スペッキオと一緒にずっといるけど、最初からいた。」

ルッカ
「おじいさん何者なの? 何している人なの?

スペッキオ
「あの人は何もしない人、いつもここで寝てる人」

ルッカ
「この部屋はなに? 資財とか何処から運んで誰が作ったの?」

スペッキオ
「全部僕が作ったのね。そこのお爺さんにダメ出しされながら。センスの良い部屋を作ったつもり。資財は僕の中からだけど…

ルッカ
「魔法で作ったということ?(なるほど。魔法が酸素とかワープさせたり、あるいは無から生み出してるとすれば、この空間全部を魔法で作ることもあり得るか…)

ルッカ
ゴハンとかどうしてるの? 私お腹減ったけど、もしかして、食べ物も魔法で生み出せるの?」

スペッキオ
「スペッキオは、お腹減らないから食べない。生み出す事はてきるよ。

ルッカ
「じゃあ、ハンバーガー出せる?

スペッキオ
「スペッキオそれわかんない。

ルッカ
「どんなものが出せるの?

スペッキオ
「スペッキオはチャーハンが好き

ルッカ
「じゃあ、それお願いできるかしら?

スペッキオがチャーハン!と唱えると器に盛られたチャーハンが出てきた。
スペッキオはそれを貪った。

ルッカ
「…」

スペッキオ
「ごめん、お腹空いてないけど、おいしそうだからつい食べちゃった。もう一つだすね。


クロノ達はスペッキオが生み出したチャーハンを食べた。

ルッカ
「もしかして、オイルとか車とか、兵器とか生み出せるのかしら

スペッキオ
「何でも生み出せる訳じゃないの。スペッキオが生み出せるの、単純なものだけ。

ルッカ
「チャーハンって料理としては作る過程とか複雑だと思うけど…


ルッカはチャーハンを調べた。見た目も味もチャーハンに違いないが、胃に貯まらない感じがした。

ルッカはチャーハンを食べながら、この時の最果てに来る前の事を思い出した。ドローンが入れなかったこの世界。でも手元にはドローンが実際にある。
ルッカはドローンを飛ばして部屋の外を調べてみた。

暗闇が続くだけで、他には何も見つからない。
部屋の外にあるゲートにドローンは入らない。
ルッカがドローンを手元に戻すと、
バッテリーの残量メーターが減ってない事に気付いた。


「どういうこと? もしかして、この世界では時の流れが止まっている?」

「だとしたら、この世界にいると老化しない事になるの? 
空腹が満たせないのも、私達の時が流れてないからなのかしら?」

ルッカはロボにボールペンとチャーハンを持たせ未来に一度帰って貰った。ロボはチャーハンを持たずに帰ってきた。

ロボ
「なぜかゲートをくぐった瞬間に、チャーハンが消失しました。ボールペンはゲートの向こう側に持っていけず足元に落ちました」

ルッカは時計を見た。ここに来て何時間も経過しているが、時計は止まり殆ど進んでいなかった。ロボには未来に行って帰るまでに秒数をカウントして貰ったが、ルッカが数えた秒数と一致していなかった。。ロボのカウントの方がルッカの30秒多い、ロボが未来に滞在した時間が30秒程で、ルッカがカウントしたのはトータル100秒数でロボのカウントは130秒数。

ルッカは1つの結論に至った。この時の果て世界は時が止まっていて、同時に物質的には存在していない。 


ルッカ
「恐らく、異空間に飛び混んだ私達の身体は異空間の中に今も漂い続けている。でも、意識では互いに繋がり認識し合っていて、手を繋いだり、ゴハンを食べたりできるけど、実際には手繋いだり、ゴハンを食べた事にならない。」

「たとえば私のメガネを外して、この世界に置き忘れてゲートから出たとしても、メガネは装着したままゲートから出るに違いないわ。」

時の最果てゲートに入った時の姿のまま出てくる

ルッカ
(この世界でドローンが飛ばせたりできるのは、私がドローンを飛ばせる事を認知しているからかもしれない。

スペッキオが物質的に物をこの世界に運べるなら、反対に外の世界に自身を持っていける筈で、でもスペッキオはずっとここにいた記憶しかない。恐らく外の世界に出られないということ。

部屋のインテリアや壁も全ては想念の様なもので、スペッキオですら実体のない幻なのかもしれない。
老人もずっとこの世界にいる存在、だとすれば実体は存在しないのかもしれない。


クロノ達は腹が空いていた。しかし現代ではクロノは指名手配されているだろう。安全な場所はどこにあるのか?


時の最果てに存在しているのは7つのゲート。
ロボに頼んでゲートの先を探査して貰い、安全性を確認して貰った。


ゲート1
千年祭会場、ルッカのテレポッドブース

ゲート2
現代の森、クロノが偶然にゲートを見つけた場所

ゲート3、ゲート4は、クロノ達が未来で最初に出てきた所と、時の最果てまで繋がっていたゲート

ゲート5は中世に。クロノ達が行った山中へ行ける


ルッカ
「こう見ると、全てのゲートが、一度は私達が通った場所に繋がっているようね…
この時果て世界が私達が辿った記憶から生み出しているという説明がつくけど…」


クロノ達には記憶のないゲートが1つあった。

恐竜時代へと繋がるゲート

ロボによるとゲートの先では恐竜や恐竜人がいたらしい

ルッカ
「恐竜時代に行く勇気は流石にないわね…」

クロノ達は中世に向かった。リーネを魔物から救った礼やらで、きっと食べ物に有りつける気がした。

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――――――――――――――――――――――――――――

-

山を降りようとしたとき、爆音が轟いた。

マール
「え? 何か起こっているの?」


ルッカ
「これは、砲弾の音? もしかして戦争!?

マール
「演習…とかじゃないよね?

ルッカ
「だといいけど。

クロノ達が山を降りると、城下の街は戒厳令が出ていた。
人々は街を出歩かず、皆、家々にこもり、負傷した兵士達が療養所にいた。

街の一角にある施設には数十の死体が集められていて、遺族や神父が冥福を祈っていた。

中世、A.D.1600年
魔王軍とガルディア王国軍の戦いは既に始まっていた。

「おい、そこのお前ら、戒厳令が出てるんだ外にでちゃあかん。」

見張りの兵士からクロノ達は戦況を聞かされた。

「今はまだ防戦しかできてないけど、このガルディアに伝説の勇者があらわれたんだ。その勇者さえ加勢してくれれば戦況はひっくり帰るぞ。」

この見張り兵士だけでなく、他の兵士も同じ事を口にした。

ルッカ
「伝説の勇者? なにその昔話設定」

マール
「でも街は噂で持ちきりだよ? 伝説の勇者が現れたんだって

ルッカ
「その伝説の勇者は何をしてくれたの?

マール
「伝説の聖剣、グランドリオンで1000の魔族あっという間に倒したとか

ルッカ
「それが本当なら、なんで勇者はガルディアを放置しているのかしら…
 
 真相を確かめるために、クロノ達はガルディア城へ行った。


リーネ「あら、貴方達、今までどこに要らしたの? 教会で私を助けて頂いて、ろくにお礼も申しあげられぬまま、いそいそと、どこかへ行ってしまわれ…」

リーネ「とはいえ、私も今は悠長な事を言ってられない身。魔王軍がそこまで迫ってきております。気を付けてください。
こんな時、伝説の勇者がいてくれたら…」

マール
「伝説の勇者ってどんな人なの?

リーネ
「私も詳しい事は存じ上げないのですが、素晴らしい勇者だと聞き及んでおります。

マール
「王様もなにかご存知なのですか?

王「わたしも詳しい事は分からないのだが、その勇者は南の大陸に進んだと聞いておる。
現在、魔王軍は大陸を結んだ橋の前で我が軍と交戦しているが、その橋を抜けたという話を聞いた。魔王軍をものともしないそのチカラはまことの勇者に違いない。」

クロノ達は半信半疑だった。
ガルディアは噂話におどらさて現実逃避をしている様に思えた。

戦況はガルディア本土へと続くゼナンの橋に魔族の侵入を許している。魔族の侵入を防ぐ為に破壊したが、魔族はその橋を骸骨で補強しているという。

将軍ビネガーは動物や人間の骨を集めて操り、壊れた橋にかけた。その橋の上を骸骨の兵士が進行しガルディアの兵士達は血みどろの戦いをしていた。

正直、クロノ達では戦力になるとは思えない。

ルッカ
「大丈夫、私達には命知らずのロボがいる。」

クロノ達は橋へと向かい、ロボは敵のガイコツ兵を一撃で倒していく。
「なんだこの鉄の生き物は!」
「敵の妖術兵士か?」
苦戦している兵士たちを尻目に橋に群がる敵を蹴散らして進んでいく。
「いや、こいつは我々に味方してくれている」
「もしや、この鉄の生き物が伝説の勇者なのか!」
「いや、この鉄の生き物を後ろで操っているのが、本当の勇者様に違いない。」

ロボの後ろでロボを指図していたルッカ

「見知らぬ貴方たちの助太刀に感謝致します。しかし、橋の向こう側にいるのは将軍ビネガーです。奴の妖術はとても危険です。どうか気をつけて。」

ロボは強かった。10人力、100人力のチカラがあった。

とはいえ敵の数は橋を埋め尽くしている。ガイコツ兵士は、ゆうに1000を超え、ロボがフォローしきれない敵がガルディアの兵士に襲いかかる。

負傷する兵士を見ながらクロノ達は覚えた魔法で防戦するものの、付け焼き刃のチカラでは全く使い物にならなかった。

ピストルは弾数は限られていた。マールのボウガンの矢も限りがある。ここぞという時にしか使えない。

剣道を習ったクロノなら頼りになると思いきや、ガイコツ兵のスカスカの身体には細い刀では攻撃力不足だった。

しかし、まったく役に立たない事もなく、刀の鞘は効果があった。鞘で骸骨を横転させ、その隙に骸骨を海へと落とす。


マールは倒れた兵士を療養所に運ぶ手伝いをし、クロノは鞘をバッドの様に振り回し援護した。3時間程繰り返したところで、
『はいこれ、サンドイッチ!』『はいこれ水!』
マールからの救援物資。食べながらの戦いはきついが、合間合間に休憩時間をとり、クロノ達が戦いに参加して16時間がたち夜が明けた。


ビネガー「うぬ? 我が部隊が押されている? こうなったら、とっておきのガイコツ兵をだすよ〜ん」

ビネガーが呪文を唱えると、ロボに倒されて動けなくなっていたガイコツ兵が一斉に集まり、ひとつの巨体なガイコツになった。

巨体ガイコツの腕振りの長さは、いままでの100倍はある。兵士達は近づく事さえできなかった。

しかしガルディア兵も負けてなかった。後ろに兵を引かせると、大砲をぶち込んだ。

ビネガー
「うそーん!」

大きい分だけ的が狙いやすい。砲弾は簡単に命中した。

ビネガー
「うぬぬぬ、ならば、今度は小さなガイコツ兵だ。」

大砲でバラバラになった骨がビネガーの呪文とと共に集まる。
小さな骨の集合体が与えるダメージは少ないが兵士達の足元を絡め取ろうとする。
兵士達は苦戦を強いられた。

クロノはどうしていいか分からず、負傷して動けない兵士に群がるガイコツを追っ払うことしか、できなかった。
それでも助ける事はままならず、クロノ達の前で人が死んでいった。

戦力になるのはロボだけだった。

橋の上で互いに消耗戦が繰り広げられた。

そこから数時間後、ビネガーは魔力を消耗し撤退した。