クロノファン2022

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時をかける女王13話から

■13話



-



クロノの裁判には大臣の思惑が絡んでいた。
クロノとマールと恋仲になる恐れ、万が一にも王族に平民の血筋を混ぜたくない、大臣の血族史上主義により、クロノには死刑を前提とした裁判が行われた。
無罪判決だったとしても後日、大臣の独断で死刑を強行するつもりだった。

サラ
「なんでしょうか? やけに街が騒がしいですが…」

ボッシュ
「どうやら城からおふれが出ているようです。」

クロノの死刑執行のふれがでた。予定日は3日後であり、ガルディアの城下はこの話題で持ちきりだった。

サラ「ひどい…

ジール「このままではゲートの謎が解けぬな…

サラ「彼らを助けましょう! 

ジー
「たしかに我らのチカラを使えば難しくもないだろうが…

サラ達は城下の触書の前で怒り狂うルッカを見た。

サラ
「あのう、貴方は以前、千年祭でお見かけした…

ルッカ
「あ、貴方はクロノの無実を訴えてくれた人ね。ありがとう。私はクロノの幼馴染でルッカといいます。

サラ
「クロノさん、このままだと大変なことに…

ルッカ
「そう、だから私決めたの!」
 
サラ
「決めた…って?何を?

ルッカ
「…誰にも喋らないって約束できる?

サラ
「ええ。

ルッカ
「クロノを脱獄させる。 

サラ
「! 脱獄って、そんな大それたこと、大丈夫なの? 

ルッカ
「私、こうみえて天才発明家で天才的頭脳の持ち主だもの。不可能はないわ。

サラ
「でも、脱獄させた後はどうなさるのですか? 逃げる場所などあるのですか?

ルッカ
「私はクロノを連れて過去に逃げるわ

サラ
「過去!? それってやっぱりあのゲートが…

ルッカ
「え!? なんでゲートのこと知っているの?

かくかくしかじか

ルッカ
「え!? 貴方達、過去の時代から来たの!?   

かくかくしかじか

ルッカ
「なるほど。貴方達は暴走したラヴォスというものに巻き込まれて現代に飛ばされたと。だから過去に戻る方法を探していると…

サラ
「はい。

ルッカ
「でも、残念ね…。私が行ってきた時代は400年前の中世期、魔王軍とガルディアが戦争している危険な時代だった。貴方達のいた時代ではなさそうよ…

ジー
「魔王? そういえばケヘランがラヴォスの話をしておったなぁ」

サラ
「え? お母様、今何とおっしゃいました?

ジー
「実はな…




ボッシュ
「もしや魔王というのは我々の時代の知識を持っておるのではないかのう。つまり、その時代に行けば、我々の国の者にも会えるやもしれぬ。」

サラ達は意見が一致した。ルッカと共に中世に行き、魔王から話聞き出すことに決めた。

ルッカ
「え? 貴方達、中世に行きたいの? 

ルッカ「なら、クロノを脱獄させるついでに私と一緒にくる?」

ルッカ
「え? クロノの脱獄に手を貸してくれるの?」


ルッカ
「それは有り難いけど、流石に迷惑なんじゃ…

サラは魔法を見せた。

「なるほど。魔法なんて最初は冗談か何かと思ってたけど…

 これなら脱獄計画は完璧だわ。」


なんやかんやで、サラ、ジール、ボッシュ、クロノ、マール、ルッカが千年祭からゲートに入った。


ルッカ
「な、なにこの感じ…いつもと違う…時空が不安定…

マール
「な、なんか怖いよ、私達、ちゃんとゲートから出られるのかな…

ルッカ
「まさか一度にゲートに入れる数に人数制限とかあったのかな…」


クロノ達はなんとか中世へとたどり着いた。

ルッカ
「ヒヤヒヤしたけど何とか大丈夫だったわね。

6人は山を降りて、このままガルディアの城門を叩いた。


兵士
「まて! お前達の中にいるその者達はなんだ! 魔族ではないのか!」

兵士はサラとジールに向かって、人間とは耳の形が違う事を指摘した。
城門で言い争っていると、大臣とリーネがきてその場を収めた。

大臣
「この者達は問題ない、通せ。」

ガルディアは魔族を警戒していて、恩人であるクロノ達に無礼を働いた事を謝罪した。

サラ達は自分たちのいきさつを説明した。

大臣
「ほう、魔力のある人間がガルディアにいるというのはある意味、吉報であるのう」

サラとジールの存在は軍部会議にかけられ、魔王軍掃討に助力してくれるのなら、衣食住の保証をしてくれ、この世界にいるかもしれないジール王国の人間の捜索に助力してくれるという。

サラは条件を加えた。魔族を滅ぼしても未来では生き残りの魔族が不満を持って生きている。なんとかして、この時代で魔族と和平交渉できないかと。

大臣
「それは魔王側の態度によるところだろう。ソナタらが説得できるというのであればだが…

承諾したサラ達はそのまま魔王軍との戦争に突入した。魔法のチカラにより、魔王城まで行き、そこで魔王の気配がジャキに似ていると気付き、再会した。


「姉様? ほんとうに姉様なのか??」

「この気配はジャキ? まさか、あなたなの?」


儀式の間で二人は抱擁を交わした。
魔王にとっては30年以上ぶりの再会で、サラは時の重みを罪深く感じていた。

ジャキ
「私はこの地に飛ばされて、早々に魔族達に目をつけられて…」


ジャキは中世時代での経緯を説明した。
この時代に来て早々に魔族達に命を狙われ、隠していた魔力を使い、身を守った。魔族王のビネガーはジャキの大きなチカラを見るなり、将来性を感じ、城に連れて行き、手元に置いて育てた。

ジャキは城を抜け出してはこの世界を走り回り、サラを探していたが、見つからず絶望した。

ある時、ジャキは人間の領土に行きサラの聞き込みをすると耳のカタチが違うのだと言われ、魔族と勘違いされて襲われた。ビネガーは襲われるジャキを助けるとサラを探すのを諦める様に促した。

『人間はお前の様な者を受け入れない。サラという姉上もこの世界にいたとしても人間達は受け入れないだろう。殺されるに違いない』と

元々魔力なき人間を差別する文化に育てられていたジャキは、ビネガーの言葉を鵜呑みにした。

それからというものジャキは魔族として生きた。そしてラヴォスを召喚し、ラヴォスに復讐する事を誓った。地下で眠るラヴォスの力、その忌々しい力を日々感じさせられ、復讐する事だけを目的に生きてきた。
魔族達にはラヴォスが繁栄をもたらすと嘘をついて、ラヴォスを呼び出す魔術研究に没頭していて、その最中の再会だった。


ジャキはジールに恨みつらみを吐き出した。
ラヴォスが原因とはいえ、その原因を作り出したジールを憎んでいた。
魔神機計画さえ実行しなければ、こんな目に合わずにすんだのだと。

ジャキがジールの胸ぐらに掴みかかったとき、
ボッシュが止めに入り、魔神機計画の真実を語った。

魔神機計画は単なる不老不死ではなく、王宮全体の思惑があっての事だった。王族の一人ダルトンとその派閥は内心で隙あらば王の座を奪わんとしていた。その勢力は大きく、いつでも王宮は血に染まる可能性があった。
そんな中、魔神機計画が浮上し、ダルトンは目の色を変えた。国への謀反よりもラヴォスのチカラを利用することに意識が向いていたダルトンの気まぐれにより王宮は血に染まるのが避けることができていた。

ボッシュ
「つまり、海底神殿の魔神機計画は王宮内の秩序を安定させるのが目的じゃった。ジール様の不老不死願望も勿論あるが、その本目的はダルトンの望む魔神機計画を強く進める意思を示す為のものじゃった。」

ボッシュ
ジール様がサラ様やジャキ様に冷たい態度を取られていたのも、王宮の弱みをダルトンに見せつけることで油断させるのが目的じゃった。
ダルトン派にジャキ様やサラ様に人質としての価値が無いかの様に思わせておけば、いざという時に危害を加えられることも無い。シール様はその様にお考えになっておったのじゃ

ジー
ボッシュ! 喋りすぎじゃ! わらわの努力を無駄にしておって…」

ボッシュ
「いつまで演技を成されるおつもりか。もう王国は無いのですぞ。」

ジー
「今更まともな母親の態度をとれというのか? そんな事をしても、わらわが惨めに成るだけじゃ。王権とは名ばかりの惨めな王の姿を子供達に見せろというのか?」

ボッシュ
「もう良いではありませんか。たとえあの時代に帰っても、ダルトン達の手の中で踊らされる人生ですぞ?

ジー
「しかし、わらわには王国を捨てる事はできん。ダルトンが王権を得てしまえば、いまよりも地の民への仕打ちが酷くなるのだぞ。

ボッシュ
「しかし、それではジール様ご自身の人生が…

ジー
「わらわの人生をお主が決める権利はないぞ」




サラ
「いい争ってるところ悪いけど、私達これからどうするの? ガルディアにジャキを連れて行っても大丈夫なの? きっと魔族王が来たって思われて、大変な事にはなるのではないの?」

ジャキ
「その心配はあるだろうが、人間は我らの敵ではない。案ずることは無いだろう。」

サラ
「じゃき! 貴方、なんて酷いこと言うの! この後に及んで力で解決しようとするなんて最低です!」

ジャキはあたふたして取り乱した。

ボッシュ
「しかしのう、話せば分って貰えるというものでもないからのう。」

ジャキ
「ならばこうすれば良かろうが!」

ジャキは自身をカエルに変身させた。

ジャキ
「以前に何度か人間をカエル姿に変えてやった事があった。カエルの騎士が魔族軍を掃討したこともあったから、この姿なら人間も受け入れるかもしれん。魔族に人間の姿に変えられた哀れな兵士という事にしてくれ」

サラ
「ジャキ! 貴方、人々になんて事を! あれ程、人に向けてみだりに魔法を使ってはいけないと教えてきたのに!」

ジャキ
「一応、手加減はした。傷付けないように戦力を奪う。だからこそのカエル姿だ。」

サラ
「言い訳するの!? そんないい加減な大人になるなんて、ああ、お姉ちゃん悲しい!!」

ジャキはサラの説教を聞き、ちじこまっていた。

「いい? カエルにした人間を探し出して必ず元の姿に戻すこと。」

ジャキ
「判ったよ姉上…。(それにしても40過ぎた年上に対して言葉がきつくないですか? 私もう母上と同じくらいの年齢上なんですけど…)」


ジー
「いい争ってるところ悪いけど、一旦ガルディアに戻らんか? 魔王城ってジメジメしてなんかイヤじゃ…」


サラ
「待って! 私たち、ガルディアと魔王軍の和平交渉するって約束してたの忘れてた! 人間の領土に攻め込まない。魔族が人間を食べないこと。そういう約束を魔族としないといけないのだったわ。

ジャキ
「えー!

サラ
「えー!って何よ! 貴方一応ここの王様でしょうよ。魔族を導く責任と義務があるでしょうよ!

ジャキ
「えー!」


そんなこんなで魔王軍との争いは終わり、一行はジャキを残してガルディアへと戻った。
これからジャキは魔族を説得する仕事をし、サラ達は和平交渉の調印書を持って行き、ガルディアと交渉しなければならない。

人間側は酪農や農産業技術を魔族の文化に持ち込んだり、魔族側は人間を襲わない様に教育したり、互いに我慢するところはあったが、ちゃちゃくと丸く収まっていったのだった…

サラ達が尽力をしていると間、
マールは一人、元の時代へ戻り、クロノの無実を主張した。
王宮はマールの熱意に押され、クロノの罪を不問とし、一方、ルッカはサラ達が元の時代に帰れる様にゲートを探し出す機械を作る事に没頭していた。

ルッカ
「やった! ついに完成したわ!」

ルッカが試作機のスイッチ押して完成を確かめると、ガルディアのマールに報告へいった。
その道中、森の中で試作機が反応し、もう一つの時空の歪みを見つけたルッカ

ルッカは恐る恐る小型をロボットをゲートの中にほおりこむ。
カメラでゲートの向こう側を確認すると。

「大丈夫そうね…」


ルッカは一人では心細い。
クロノを呼び出しに行き、ゲートの先へと向かった。
その光景を城の窓から見ていたマールは

「ねえ? 二人共私を置き去りにしてどこ行こうっての?」

ルッカ
「マール、このゲートの先はどうなってるのかはわたしもまだ分からないの。王女である貴方を危険なところには行かせられないわ」


マール
「そんなこと知らない! 私はまた二人と冒険したい! だからついてく!」

ルッカの持っているゲートホルダーを奪ったマール。
「ダメだってば!」
ルッカがすかさず取り返すと二人は取り合い、もみ合いになった。
クロノがそれを諫める様に割ってはいると石に躓いて転げた。三人とも倒れこむと、いつのまにかスイッチが押され、いつのまにゲートの中に吸い込まれていった。





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――――――――――――――――――――――――――――

■14話

ジールとサラの出番は殆どなし

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未来から帰ってきたクロノ達は中世のガルディアに来ていた。

サラ
「まあ、クロノさんにマールさん、ルッカさんお久しぶりです。それから貴方は…」

ロボ
「はじめまして、ロボと申します。

ジー
「鉄の生き物が喋っておるぞ

マール
「未来のロボットなの。

ジー
「千年祭での歌う奴といい、人間はなかなか凄いものを作るな。

マール
「あれはルッカが作ったの。ゴンザレスっていうの!

ルッカ
「まってマール、話がそれてるわ。

マール
「あ、そうだったごめん!



クロノ達は未来の世界がラヴォスに滅ぼされていた話を説明した。


サラ「え? 未来の世界が?」


ジー
「まさかラヴォス神がそんな事を…わらわはその様な危険なもに縋ろうとしていたのか…

サラ
「お母様、だとしたらジール王国の民たちは…

ジー
「信じたくないが、この時代の歴史に我らの歴史の記録が欠片も残ってないことを考えると…


サラ
「クロノさん私を未来まで連れてってくれませんか? この目でラヴォスの被害を確認させてください。」



ジー
「まて、お前はこの時代で魔族と人間を束ねる仕事が残っておるだろうが。戦争は終わったとはいえ、あくまで名目上のことだ。人間に反目する魔族も魔族を敵視する人間もまだ多い。わらわ達が今この地を離れる訳にはいかん。


言い争っているとボッシュが名乗りをあげた。
「私が行って参りましょう。」

ボッシュはサラやジールと比べると戦力が遥かに劣っていた。


〜時の最果て〜

ボッシュ
「こ、この気配はまさか!」

ボッシュは周りを見渡すと走りだし、扉の先にいる時の番人の元へと走った。

ボッシュ
「お、お前さんハッシュか?」「よく生きておった。」

時の番人
「はて? お前さんは一体…」

ボッシュ
「何を訳の分からないことを言ってるのじゃ!   

 ワシじゃよ! 弟のボッシュじゃ。
 お前さんあれからどうなった? ワシがタイムゲートに飲まれた後、お主もタイムゲートでここに飛ばされて来たんか?

時の番人
「はて? 弟…、ゲート? ワシは、この世界に生きる時の番人じゃが…」

ボッシュは気付いた。この空間全体からハッシュの魔力を感じる事を

ルッカ
「どうしたのボッシュ? 貴方顔色悪いわよ

ボッシュは思った。ラヴォスが生み出したタイムゲート。ハッシュが飲み込まれた先に恐らく出口は無かった。
時の狭間で永遠と彷徨い、肉体が朽ち果てる前に、せめて同じ様な被害者を出さない様にと、魔力空間を作り出した。時の中を彷徨う者を集め、案内する仕組みを作ったまではいいが、その仕組みに自身の記憶までは残せなかった。

スペッキオは飲まず食わずでも千年生きれる特殊生物。主人であるハッシュがこうなって、さぞ、寂しかったに違いない。

スペッキオ
「大丈夫。世話をしてくれる人がいた。もう100年くらい来てないけど。」

ボッシュ
「一体誰がお前さんの世話を」

スペッキオ
ガッシュ!」

ボッシュ
「本当か! ガッシュがここに? ガッシュはとこに?」

スペッキオはガッシュがやってきたゲートを指差した。

スペッキオが差したのは原始時代へと続くゲートだった。
「ここから良くごはんを持ってきてくれた。その後、こっちのゲートを良く通ってた。」
スペッキオは未来へのゲートを指差した。



〜未来のゲートの出口〜

ゲート前、古代のセキュリティシステムに使っていたの同じ模様の扉を発見したボッシュ、。

ボッシュは悟った。
ガッシュは未来に飛ばされた後、どうにかして元の時代へ帰ろうとゲートの痕跡を探したに違いない。ゲートを開く装置かあるいは魔術を開発し、時の最果てへと続く道を見つけた。

最果てには原始時代から既に誰かが、やってきていたのかもしれない。時を彷徨う者が最果てにて保護され、そこから元の時代へ帰れたか、そこからどうしたかは分からないが、、きっとガッシュもそうだったのかもしれない。ガッシュは原始時代へと続くゲート見つけたはいいものの、元の時代へと帰る道は見つからなかった。

最果てから古代人の誰かが助けにきてくれるのを信じていたのかもしれない。
この扉を残して、自身の存在に気付いて欲しいというメッセージを残したに違いない。

ボッシュ達は未来を手分けして捜索した。



南部の大陸のドーム内にヌウを発見した。

ボッシュ
「ヌウ? いや、普通のヌウとは違う。これは…

ボッシュ
「これはガッシュの魔力…あやつ死ぬ前に自身の意識をヌウの中に押し込めたな。」

ヌウには目的がプログラムされていた。
時の翼シルバードの制作とメンテナンスだった。

ガッシュの奴、死して尚、時の研究をしておったか…」


時の翼、シルバード。
シルバードが行ける時代は時の最果てにあるゲートから行ける時代である。
シルバードは時の最果てとシステム的にリンクしていて、古代には行くことはできない。
今行けるのは原始、中世、現代、未来への4つだ。




ジー
「そうだったか…未来にはガッシュが、そして最果てにはハッシュが…」

ボッシュ
「とても残念です。」

ジー
「だがまだ終わった訳ではなかろう。ルッカ殿が開発したゲートを探す装置、あれがあるではないか。


ジー
ボッシュ、せっかくだからその装置で原始時代も調べてきたらどうじゃ?。どんな世界が待っておるのか、わらわは興味津々じゃが今はまだここを離れられん。


クロノ、マール、ルッカ、ロボ、ボッシュは原始時代へと向かった。シルバードは三人乗りなので2回に分けた。


ルッカ
「なんだか騒がしいわね…

ボッシュ達の場所から原始人の村へは少し離れている。

ルッカ
「…ロボ、ちょっと様子を見てきなさい。」

原始人は何やら宴の用意をしていた。

ロボは走って戻ってきた。原始人を引き連れて

「うんばばうんばうんばば!」
(おまえ達あやしい奴!)


原始人達十数人は5人とシルバードを取り囲んで槍で威嚇した。

「うんばば!うんこばば!? ばつんつば、はらま、たさら、したあら!」
(お前達どこの部族の者だ?まさか、恐竜人の手先ではないだろうな!)


ルッカ
「どうしよう、何言ってるか全然わかんないや…

いきり立ってる村人の間を割くように族長の娘エイラが現われる

エイラ
「がばちょ、がばんちょ、ちょんばから、くじら?
(エイラ質問ある、お前たちの後ろの、デカイもの、なに?くじらか?)


エイラはシルバードを指してジェスチャーする。

クロノ達がどうして良いかわからず、もごもごしていると

エイラ
「ちょなんかん、さむにだはむにだおっぱー?」
(お前たち、もしかしてエイラの言葉通じてない?)

エイラがシルバードに近付いてコンコンと叩いた。
匂いも嗅いでいる。
かじりつく。

(う、食べられないし、おいしくない…)

エイラはクロノ達のニオイを嗅いだ。

(おまえたち、恐竜人の匂いしない。かといってエイラ達とも匂い違う…)

エイラ
(みんな集まれ! 新しい部族の発見だ!)


エイラの掛け声と共に村人が一斉に集まる。

クロノ達はどうしていいかわからずビビリまくる。

ルッカ
「ねえ? 逃げた方が良くない?」

マール
「私達、もしかして丸焼きにされて食べられる?」

ボッシュ
「安心せい、なんかされたら魔法でズドンじゃ。」


村人はクロノ達の予想に反して歓迎ムードだった。
村は恐竜人に対抗する為に部族同士の繋がりを求めていて、クロノ達を宴に歓迎するが、クロノ達はどういう意図があるのか分からなかった。


エイラは踊り歌い、その後酒をメンバー達に注いだ。
クロノ達は酒飲みファイトに巻き込まれてエイラと共に酔いつぶれた。

翌朝、二日酔いと共に目覚めるメンバーは、
エイラと族長から、根堀りはほり質問攻めにあった。


ルッカ
「こ、困ったわね…」

マール
「なんだか真剣そうに話しているけど、

ボッシュ
「酒もたらふく飲めたし、このままバックレるかのう。」

ロボ
「言語パターンを収集しました。今から原始言葉を翻訳できますが、どうしますか?」



ロボ翻訳により、クロノ達はこの時代で起きている事態をおおよそ理解した。

ルッカ
「恐竜人と人間の戦争か…」

マール
「手を貸しちゃう? 私達、魔法のやり方覚えたしめっちゃ強いよ!」

ボッシュ
「争いは好かんのじゃが…」


クロノ達が何色を示していると、外から悲鳴が聞こえた。

村人がエイラの元にかけよる

「大変だエイラ! 北の村に恐竜人が火を放った。しかもキーノを連れ去っていった。」

エイラ
「どうしてキーノが!」

「恐竜人のアザーラが言ってた。キーノを返して欲しければディラン城へ来いと。」

エイラには心当たりがあった。以前に村の近く森の中の恐竜人の巣穴に単独で攻め込んだことがあった。その際、親玉のアザーラに逃げられていた。エイラと親しいキーノを捕まえて、アザーラは復讐するつもりである。

「エイラ行く! ティラン城に乗り込む!」  

ルッカ
「一人では危険よ!」

マール
「私達も協力するよ!」

ボッシュ
「ワシは酒の酔いを冷ましたい!」


一行はエイラに連れられ、北にある山からプテラに乗った。 

ルッカ
「え? マジこれ乗るの?

マール
「だ、大丈夫かな…

ボッシュ
「ワシ、高いところ苦手じゃー!」


アザーラのいるティラン城は高さ1000m。そびえ立つ崖の上にあった。

外敵からの侵入を防ぐ為に建設されたのだろうが、この高さは人の足で容易に上り降り出来るものではない。この場合、恐竜人にとっての外敵とは人間だけを示す訳ではないのかもしれない。同族の恐竜人か、あるいはもっと異なる意図があるかもしれない。

空を飛ぶプテラもそうだが、高いところから離着陸できる方が生活の利に叶う。恐竜人がもし翼竜系統であるならば、高さ1000mの崖上は快適な生活拠点になるのかもしれない。

ルッカ
「少し酸素が薄いけど問題ないレベルね。」

マール
「なんで、こんな高いところに城があるのー?」

ボッシュ
(高いところ怖いー! でも酔いが覚める!)


6人が降りると、エイラは真っ先に門へと走った。

ルッカ
「まって! 一人では危ない!」

マール
「ねえ? 恐竜人ってどんか顔しているのかな?

ボッシュ
「…」
ボッシュプテラに酔ってゲロをほんの少し飲み込んだ。


全員が城に入ると門が閉じて鍵が掛かった。

ボッシュ
「どういうことじゃ?」

ルッカ
「え? まさか自動ロック?」

マールとルッカが反作用ボムを使い、ロボがタックルしてみるがビクともしない。

ルッカ
「これが原始の科学技術なの? これってもしかして私達の時代よりも上なんじゃないの?」


マール
「恐竜人って一体何なの? 魔法使える様になったけど、自信なくなってきた。

ボッシュ
「気をつけるんじゃ。こんな丈夫な扉を作れるのなら、きっと武器等も作れるじゃろうて。」


5人が玄関でもたついているとエイラが立っていた。
エイラは既にキーノを救出していた。

エイラ
「どうしたんだ皆?」

ルッカ
「閉じ込められちゃったの…」

エイラは拳で門を殴りつけた。
ビクともしない。

ルッカ
「恐竜人を探して開けて貰うしか無いわね…」

一行は城の奥へ進んだ。

現代にもまだ存在しないエレベータにクロノ達は驚きつつ、城の上階へと進んでいく


最上階から向かいの塔へと渡り廊下が続く


ルッカ
「変ね…恐竜が待ち伏せしているかと思ったけど、誰も居なかったわね…」

マール
ティラノサウルスみたいのが出たらどうしようかと思ってたけど、出てこなくて良かったよ。」

ボッシュ
(ワシはゲロが出なくて良かったよ…)



渡り廊下の先ではアザーラが空を見上げていた…




-



――――――――――――――――――――――――――――

■アザーラのミステリー



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アザーラはエイラを見ると、「少し早かったか」と呟き、塔の奥へと消えた。
しばらくすると、アザーラは巨石型のティラノサウルスの背に乗り現れ、エイラ達に向かって突進してきた。


廊下を埋めつくす程の巨体が、もうスピードで突進してくる。

反応の遅れたルッカとマール。
エイラが端に押し出してかぶさる。

地響きによろけたボッシュ。キーノが押し出して被さる。

ロボは立ち尽くし、クロノは巨石の足元にすべり混んで避けた。

ボウガン、ハンドガン、魔法で巨石に攻撃を加えるが全く効き目がない。


突進を繰り返すので、アザーラを魔法で狙うにも座標が合わない。

エイラは口笛を吹き、プテラが橋に近づくも、巨石の突進で誰一人乗る事ができない。

プテラは上空を旋回しながらエイラ達の攻防を見守っていた。

エイラは口笛を橋の下に向けて吹いた。

プテラがその意図を理解して、橋の下からクロノ達を受け止めようとする。たが巨石の吐く火でプテラ達は上手く立ち回れない。

突進しながら下に向けて火を吐くティラノサウルスは、首を下に伸ばしている。
その首にエイラが飛び乗り、アザーラに拳をぶつけた。

アザーラは吹っ飛ぶ事なく耐えた。

アザーラの周りには見えないバリアが張られているかの様にエイラの攻撃が届かない。

何度もパンチを加える。
エイラが驚いているとアザーラはニヤリと笑い、エイラを振り落す為ティラノを回した。

エイラがよろけて落ちそうになったが、
キーノが直ぐ後ろにいて支えた。エイラはパンチに夢中でキーノが後ろにいた事に気付かなかった。

「エイラ一人で無茶する。ダメ。」


二人は振り落とされない様に龍の背にしがみついた。


エイラ
「アザーラ! そこから出てきてエイラと勝負しろ!」

エイラ
「大地のおきて! 強いものが正しい! アザーラが言った言葉だぞ!」

エイラ
「隠れてるのは卑怯だそ!」

エイラが話している隙にプテラがクロノ達を助けようとするが、いつまた突進されるのか分からない中でプテラ達も尻込みしていた。

エイラ
「恐竜人、人間の言葉話せるのアザーラしかいない! アザーラ、どうして人間の言葉を話せるのに人間を襲うんだ!」


エイラ
「何故、人間と恐竜人、戦う必要がある!」


エイラが喋ろうとするとキーノが立ち上がった。

キーノ
「ずっと疑問に思ってた。

 アザーラ、なぜ僕を殺さなかった。

 僕をエサにして、城に皆を閉じ込める目的なら、僕を生かしておく必要なんて無かった筈だ。

 それに…
 僕達を殺すなら、なぜ、城に恐竜人がいないんだ。

 アザーラ、君は最初から僕達を殺す気なんてなかった。

 今だってそう。僕をいつでも振り落とせるのに君はやらない。


 なぜなんだ?

 君は僕達に何をさせたいんだ。」


アザーラ
「させたい?だと…」
 
アザーラ
「お前たち無力な猿に何ができるというんだ…

 何もできない。何もできないんだ…」

キーノ
「キーノ分からない。エイラ、キーノも恐竜人と闘いたくない。戦わないということ、できる。

エイラ
「そうだ! アザーラが恐竜人、みんな、説得してくれれば、エイラもエイラの村のみんな、喜ぶ。」

アザーラは空を見上げた。

エイラ
「アザーラ、話しあおう!」
    「まだ…見えないか…」
エイラの言葉にアザーラの声がかき消された。
エイラ達が「何が見えるのか?」と聞き返したのであればここでのクロノ達のシナリオも大きく変わったのかもしれない。


エイラ達の会話のやり取りの隙にボッシュとマールとルッカプテラに救出された。

それを見たアザーラはティラノでクロノ達に突進、噛みつき攻撃をした。

苦労して寸前で交わすクロノに対して、ロボはティラノの動きを計算し、ちょこちょこと無駄のない動きで避ける。

ティラノには首輪がついていた。
鎖は繋がれていない。根本から30m程あり、ズルズル引きずっている。

クロノは塔の中に鎖を繋ぐ杭の様なものがあると考えた。

鎖を繋げたらと考えたが、重くて持てる代物ではない。
案の定、どうにもする事も出来ず、杭のあるフロアで逃げ惑った。

アザーラはどうやって重い鎖を外したのか。

クロノは奥の部屋へと逃げた。
奥の部屋は狭まっており、ティラノは入れない。
クロノは一先ず助かったと息をすると、目の前に椅子とモニターの様なものを見付けた。
椅子もモニターも石で作られてる様なデザイン。
座ってみるも座り心地は悪くない。

竜人のコンピューターだろうか、未来で見た形とも違い、スイッチがない。画面に触るも何も変化がない。

画面には隕石が大地に衝突する光景が繰り返し映っていた。

現代では隕石についての知識がまだない。クロノは映像が何を意味するのか、この時は分からなかった。

巨石龍は渡り廊下へと戻っていた。
既にロホもプテラに乗り込んでいて、エイラとキーノ、クロノを待つ為に旋回している。


巨石龍は廊下の中心にて止まり、アザーラは空を見上げていた。

静かになったアザーラにプテラが近づこうとするが、罠と思い、近づけないでいる。


エイラがこれまでとは違う口笛を吹き、キーノに合図を送ると、二人は大きく飛び、橋から飛び降りた
プテラは急降下して、二人を受け止める。


クロノが鎮かな渡り廊下を不思議に思い恐る恐る覗こうとすると、マールが叫んだ。

クロノも飛び降りる様にと。
エイラもキーノも飛び降りたから、大丈夫だという。

クロノは高さにビビった。いつ襲ってくるか分からない巨龍も恐れた。
不安と不安が入り交じる中で、ロボのセンサーがラヴォスを探知した。



ロボ
「皆さん大変です。空に…ラヴォスがいます。」



ルッカ
「え? ラヴォスが上に? どういうこと?


ロボ
「予測約、直径1km、質量80万トン、秒速30km。ラヴォスがここへ落ちてきます。
このあたりの地表直径10kmが吹き飛ぶ計算です。」


ルッカ
「え? 

ルッカはロボの話を聞いてもピンと来なかった。
『直径1km、質量80万トン、秒速30km、それが落ちてきて直径10kmが吹き飛ぶ』ということの意味を冷静に頭にインプットするには10秒の時間を要した。


ロボ 
「グズグズしているヒマはありません!
 ラヴォス衝突まで後40秒しかありません。」


ロボはプテラから飛びおりてクロノへ走った。
関節部位がカャシャカシャと音を立てる。

クロノを押し出し、ロボも廊下から飛んだ。

クロノとロボをプテラがキャッチしたとき、

上空が小さく赤光りした。


アザーラはまるで花火見物するかの様に空を見上げていた。もしかしたらバリアで自分だけは助かるとか思っているのか?


ラヴォス衝突まで残り30秒でルッカは顔面蒼白になった。

「や、ヤバイ!とにかく皆逃げて!ここから離れて!」

ルッカは死にものぐるいで叫んだ。

ロボとルッカ以外、問題の重大性を認識していない。

一般的に隕石が大気圏に突入して減速が期待できるとしても、最大でも半分の秒速15km程度にしかならず、このラヴォスは時速5400kmで地表に衝突する。

鳥特有の地場の変化を察知して逃げるとしても、大気圏に突入してからでは手遅れである。


ラヴォス隕石が途方もない磁場を生み出しているのなら、プテラが危険を感知することもあり得ない説ではない。
ラヴォスは地表に衝突すると古代へのゲート、(時空の歪)を生み出すので、プテララヴォスの異常な量の地場を感知することも、有り得ない話ではない。
あり得ないとクロノ達はここで全滅するしかなくなる。


そんなこんなで

プテラが気を効かせて飛び立った。

プテラが異常な地場に驚いて、我武者羅に飛んだ。
そういうことにして…
運良くクロノ達は助かった。



アザーラの目的は何だったのか。

ティラン城の秘密は一体何なのか。

クロノファンなら妄想で補うしかない…







-



――――――――――――――――――――――――――――

■16話

ラヴォスが衝突したところは火山が噴火したかの様に上空まで砂煙を舞い上げた。
衝突の高エネルギーで砂の原型すらとどめない微粒子が空を覆う。

砂埃が鳥ですら届かない上空にまで巻き上げられるなら、鳥も含めて絶命するだろう。地上で生活するニワトリの様な鳥なら、とうだろうか?

一説によると、巨大隕石が衝突すると、その衝撃による高温高圧で土の分子は細かく分解され、その煙は数ヶ月、あるいは何年も上空を漂い、光を遮るという。

微粒子の砂は雲の水分と吸着し重力と共に落ちるので雨が降る。その隙間から光がある程度地表に届くとしても常に空に雲がある訳でもない。

空の全ての雲が雨になったとしても、煙は残るとして
イオカ村は曇り空の中で生活することになる。
気温はぐんぐん下がり続け、
体温調節の苦手な爬虫類系は絶滅するだろう。



-

エイラは水辺でプテラの身体を洗っている。藁の様なものでゴシゴシしている。

ラヴォスの衝突を近くから巻き込まれたプテラとクロノ達は水辺でススを落としていた。

プテラ達はエイラの世話になり、クロノ達も見様見真似で手伝った。



ーイオカ村、エイラの家ー

エイラ
「クロたち、これからどうする?

クロノ達はラヴォスの生み出したクレーターが気になった。

エイラ
「ならエイラも連れてけ。恐竜人から、クロたち守る」


クロノ達がクレーターに近付くとゲート探知機が唸りを上げた。

クレーターの中心点でゲートを発見したクロノ達。


ルッカ
「エイラ、この先はどんな危険が待っているか分からないわ。」

エイラ
「エイラ行く、危険、大丈夫。闘う、好き!」

マール
「なんか、寒いな…昨日と比べて今日やけに寒くない?

ボッシュ
「もしかすると、ラヴォスのせいかもしれんな。あのあと、大雨が降って、今もまだずっと曇り空じゃ。」

ルッカ
「なんか嫌な曇り空ね…早く晴れたらいいのに…」


原始時代から古代までは60億年以上の間がある。
その間に地殻は大変動し、隆起し、ゲートのある場所は山脈になっていた。
故にゲートの出口は山脈内。洞窟内部、6人はまず洞窟から外へと通ずる道を探さなければいけない。
原作設定の様に都合良く出口はなく、洞窟内には魔族の祖先が住んでいた。

ラヴォスの影響で人間は魔力を使える様に進化し、氷河期に適応したが、魔族の祖先はまだ知能が足らずに魔力を都合良く扱えなかった。魔族祖先は魔力の応用力が足りず、偏った力を持っていた。例えば寒い古代においては体温調節機能のみが飛躍的に発達した種が生き延びていて、熱や冷気に強い防御耐性を持っていた。現代においては、その機能が退化した種も繁栄できているとはいえ、この時代の魔族先祖は進化の途上にあった。

王国ジールの勢力で住処を追われ、人目を避ける様に洞窟に住んではいるが、ジール王国が滅亡してからは、彼らは急激に繁栄する事ができ、中世、現代の様な魔族へと進化することになる



「ライト!」
ボッシュが魔法で光を灯した瞬間、魔族が目の前にいた。
クロノ達の悲鳴が洞窟に響き渡る。
だが一番悲鳴を上げたのは魔族の方でボッシュは比較的冷静だった。

突然住処に侵入してきた人間に驚き、魔族達は逃げ出した。

「ここはどこじゃろうか…」
ボッシュは風の流れを視覚化する魔法と方位を知る魔法を使い、出口を探した。

マール
ボッシュって変わった魔法が使えるんだね…他に何が使えるの?

ボッシュ
「ワシはジール王国では生命魔学の賢者と呼ばれおった。回復や蘇生、何でもできるが、個人的に得意なのは魔法道具を作ったり修理系したりじゃな。たとえば剣に命を吹き込むこともできるのう。」

エイラがクシャミをした。露出がはげしくぷるぷる震えている。

ボッシュが魔力で熱を送った、

ボッシュ
「お前さんらはスペッキオから大雑把な魔法のやり方しか教わっておらんから、力のコントロールは難しいのかもしれんのう。 基本原理はファイアで、体温調節にも使えるじゃが…  

マール
「力のコントールっていうけど、私、氷魔法は使えるけど炎系は使えないよ?」

ボッシュ
「そうじゃな…
 魔法を使うとき、魔力が体から抜け出る感覚あるじゃろ? その抜け出る方向ってわかるかの?

マール「体から↑に抜け出る感じかな…


ボッシュ「なら上から下に抜け出る感覚をイメージしてファイアを唱えてみたらとうかの?


マール
「あ、出た。

 ルッカのよか小さいけど出たよ…」

ボッシュ
「魔力が抜け出る感覚を少なめでイメージして使うと火を出さず、熱を生み出せる筈じゃが…」

マールは自分に向けてファイアを放った。

「ほんとだ! 一瞬体がポカポカになった!」

マールはファイア呪文を連呼した。

ボッシュ
「本来なら無詠唱で魔法は使えるんじゃが、お主ら古代人じゃないからのう…。
 体質的に無理じゃろうな…」



ルッカ
「タイムトラベルをする魔法ってないの?」

ボッシュ
「それは兄、ハッシュの専門分野じゃった。ワシはあまり詳しくない。ワシが知ってるのはせいぜい未来への擬似的ワープくらいかの…。

ルッカ
「ワープ?」

ボッシュ
「スロウ系魔法があるじゃろ? 空間に向けてスロウを重ねがけして、その空間の時間の流れを極端に遅くするんじゃ。その中に入れば、外の世界は早いスピード進むことになる。これがある意味での擬似タイムトラベルじゃ」

ルッカ
「へー。じゃあ、原始時代から帰れなくなっても大丈夫そうね…」

ボッシュ
「かなりの魔力を使うからのう。巨大な魔法陣でも描いて代用魔力を得ないと実用性がないのう。原始時代とかラヴォスがまだ飛来しておらん時代からだと、魔法陣で得られる魔力も少ないから現代まで帰るのは不可能じゃろうな…」


ボッシュ達は洞窟を抜けた。
一面雪の降る世界。ボッシュにとってな懐かしい景色。


ボッシュ
「あ、あの光の柱は!」

白い世界で、天から伸びている光柱を見てボッシュは喜んだ。

「良かった! 天空都市は健在じゃ!」

「なんじゃ〜
 ビビらせおって! 
 未来の映像は所詮未来の出来事。
 これでジール様に胸を張って報告ができる


 後はダルトンの問題だけじゃが、奴が王宮をどの様に私物化しておるのか、考えるとゾッとするのう。」




〜入国管理局〜

「武器はここであずかりますので…」


ボッシュ
「ご苦労さん」

「やや! ボッシュ様ではありませんか! 失礼しました。どうぞこのままお通り下さい…」




〜王宮〜

「おい爺!」

「はい、なんでごさいましょうかジャキ様」
振り返り、いつもの癖で反射的に答えたボッシュ
ジャキはタイムゲートに巻き込まれて中世で魔王の仕事をしていたはず。なぜ、どうして、と
ボッシュの頭は混乱していた。


「爺! 服がボロボロじゃないか! そんな姿で王宮をウロウロするとは教師の恥だぞ!」

「あと、そこの女! ほとんど裸姿じゃないか! 一体王宮を何だと思っているのだ! おい爺、聞いているのか? 早く女を連れて行け」

「申し訳ありませんジャキ様、直ぐに着替えてまいります」
ボッシュいつもの癖で応対した後、エイラを世話役に預け、自身の部屋へと向かった。

ジャキはロボを珍しそうに見ながら、あちこち触ってる。


「姉様ー!」
ジャキはサラを呼んだ。面白そうな玩具を早く教えてあげたい。

「どうしたのジャキ」
サラが奥から出てくると、クロノ達に挨拶をした。
 



「皆さんは異国の方でしょうか?」

マール「え?どうして?」

サラ
「お召し物が見た事ないものでしたので」


マール
「え、えと、私達遠くの所、ガルディアから来たのです」

サラ
「ガルディア…
 ああ、あの国ですね。あの国は…
 良い所ですよね〜」

サラは王宮の鏡でもある。。メンツを重んていて『知らない』とは言えず、話を合わせた。


ボッシュは部屋で着替えていた。
4着ある筈のいつもの作業服が1着ない。
ボッシュはカレンダーを見て思い出した。この時代のもう一人の自分の存在を。

もう一人のボッシュは今、ラヴォス実験に備えて、いざという時の為に魔神機を破壊する剣を作っていた。
ラヴォス実験は2日後に迫っていて、この時代のボッシュは急いで作業をしている。

ボッシュは作業室へ走り、もう一人のボッシュと対面した。


「そうか…つまりお前さんは未来から来たのか…」


ボッシュ
「そうじゃ! 実験は失敗して、大変な事になる。未来で見たラヴォスは世界を破滅させたんじゃ。」

ボッシュ
「そうはいうが、ここは天空都市じゃぞ。ラヴォスが光の柱とやらで世界を破壊するとしても、この高さまで届くとは思えんが…

ボッシュ
「確かにそうじゃけど…」

ボッシュ
「お前さんも知っているじゃろうが。我らに選択肢ない。ダルトンとその背後にいる奴らの意には逆らえん。やるしかなかろうが。

ボッシュ
「確かにそうじゃけど…」

ボッシュ
「タイムゲートに飲まれたとして、助かるじゃろ? ならそんなに深刻には…」



ボッシュ
「兄さん達は死んだのだぞ!」

ボッシュ
「だったら、魔神機に剣刺したら直ぐに逃げれば良いじゃろうが。タイムゲートにまきこまれる前に。」


ボッシュ達はガッシュとハッシュの元へ行った。


ガッシュ、ハッシュ
「まさかワシが死ぬとは…」

ボッシュ
「兄さん達はどう思う?」

ガッシュ
「未来に行きタイムマシンの様な物を作る…」

ハッシュ
「記憶はないものの、時の案内人みたいな仕事…しかもオシャレな服とステッキか…」

ハッシュ、ガッシュ
「楽しそうじゃないか!」



ハッシュ、
「冗談じゃよ。歴史の欠片もジール王国が無いということなら、ラヴォスは恐らく目覚めるのじゃろうな。そしてジール王国は消滅する。」

ガッシュ
「だがな、実験を止める訳にもいかんのじゃよ。
 止めることができぬなら、やるしかない。
 要するに避難するとか、実験が失敗したときの対策をすればええんじゃろ?」
 
ボッシュ
ボッシュ二人でならダルトンを説得する事はできんかの? タイムマシンで未来を見せるとかで。」

ハッシュ
ボッシュ! それ良い考えじゃのう。それなら流石のダルトンも…」


その瞬間、クロノメンバーのボッシュの身体が光輝いて透明になった。

ボッシュ
「身体が消えそうじゃ…」

ガッシュ
「何が起こっている?」

ハッシュは考え込む。
「恐らくこれは、時の流れに逆らって歴史を変えようとしているから…かもしれん。
 ボッシュがタイムゲートに飲み込まれたからこそ、今こうしてボッシュはここに存在している。もしゲートに飲み込まれないなら、ボッシュの存在は無かったことになる。」

ボッシュ
「なら、ワシはゲートに飲み見込まれる運命を受け入れんといかんのか!」

ハッシュ
「そういう事になるな。ボッシュ、お前さんはゲートにの見込まれる時どの辺りのにおったか?」

ボッシュ
「真ん中…だったと思う。」
その瞬間、ボッシュの身体が光に包まれた。

ハッシュ
「お前さん、今嘘ついたじゃろ。本当はどのへんじゃ?

「右…」
ボッシュが光に包まれた。


4人は相談の結果、『タイムマシンをダルトンに見せる』を決断した。
『ハッシュもガッシュも死んだんだからボッシュお前も我慢しろ』ということ


4人共が『魔神機実験を止める』を決断したとき、全員が光輝いた。

ハッシュ
「『魔神機実験をしない』という選択肢は未来のボッシュが持ってきたんじゃった。そのボッシュが存在しない事になったら、『魔神機実験をしない』なんていう選択肢はそもそもワシら選べんから、ワシらの決断も存在しない事になるのう。」

『魔神機実験をしなければならない。』
そう決断したとき4人から光は消えた。


ハッシュ
「それが運命というなら、やらねばならんのかのう。


ガッシュ
「うむ。そのようだ。

ボッシュ
「…

ハッシュ
「未来から来たボッシュ。お前さんができることは出来るだけ民を安全な所に避難させる事じゃ。

ガッシュ
「もし大陸が海に落ちたら大津波が起こるだろう。海岸沿いの地の民を避難させねばならん。


過去ボッシュ
ラヴォスが暴走するにしても、ワシは念の為に赤い剣を作るよ。
 そしてまたこの時代へと皆に会いにくるよ…





未来のボッシュ
「1つ方法がある。
 未来のサラ様とジール様を連れてきて、みんながゲートから消えた後、ワシらがラヴォスと戰う。
 サラ様がラヴォスの力を押さえ込みつつ、ジール様が魔法で応戦する。」

ハッシュ
「それだと死の危険が伴うのてはないか?」

ボッシュ
「分からぬ。もしかしたらまたタイムゲートに飲み込まれるかもしれん。
 でも、せっかく築いたこの国を諦めたくないのじゃ。」

ガッシュ
「実質のダルトン政権なのにか?

ボッシュ
「天空都市が無かろうとダルトンみたいのは多くいる。地上で暮らすとしてもじゃろ…」



*1



-



――――――――――――――――――――――――――――

■ハレーションとお別れ



-

ボッシュは中世に戻り、現状の王宮を報告した。

サラ
ラヴォスと戰うって? ボッシュ本気で言ってるの? 

ジー
「正直、わらわも勝てる気がせんな…」

ボッシュ
「未来での映像を思い出してみてくだされ。
 ラヴォスは体から光を空に向かって攻撃を放つ…
 要するにラヴォスの上に居なければ安全なのではと。
 タイムゲートはラヴォス近くで発生するとして、ラヴォスから離れて遠くから魔法で攻撃するのです。
 もし危険と判断するなら、予めワープゾーンを足元近くにおいて、そこから逃げるのです。」

サラ
「なるほど。それなら…

ジール王
「まだ不安があるがな…

サラ
「魔族に助力をお願いしてみるのはどうでしょうか。戰うことが好きな魔族は多くいます。ソイソーやマヨネー、ビネガーも頼もしい戦力になるかもしれません。

魔王ジャキ
「姉様、私をお忘れですか?」

サラ
「ジャキ…



「時の流れに反してはいけない」
ハッシュの言葉

未来でラヴォスの脅威を知ってそれを前提として過去でラヴォスを倒すこと。ラヴォスが死ぬなら前提となる未来がないから、過去でラヴォスを倒すことが成立しない。

ラヴォス破壊は、未来においては可能だが、過去ではできない。
にも関わらず、ボッシュ達は光に包まれないのはどういう意味か。
以外3つのどれかしかない。

ボッシュ達はラヴォスを倒せない
ボッシュ達はラヴォスに殺される
ボッシュ達は途中で負けを認め逃げる

ボッシュはハッシュの言葉を思い出した。

避難活動が一番確実である。
ラヴォスが未来でしか倒せないのなら、未来で倒せばいい。
1999年までに、人々を未来2300年に移住させる。

1000人が収容出来るような巨大なシルバードを作り、人々を未来に連れて行く。
砂地になった未来を復興する。

ボッシュの考えを聞いたジールは古代へと向かった。



ジールは大陸の中央に特大の魔法陣を描き呪文を唱えた。
吹雪の寒い世界で、その空間だけが、温かくなる。そこにテレポートスポットを設置した。



ジールの得意な魔法はハレーション
ハレーションを受けた者は体力1になり、瀕死の重症になる。
本当に瀕死状態になる恐ろしい技でない。瀕死になった気がするだけで、死ぬような恐怖を感じるだけ。ポーションさえあれば立ち直れる。

ジールは国全体にハレーションを振りまき、弱った人々に、脅しのアナウンスをした。
「わらわのハレーションを受けたくないなら、、地上に逃げるしかないぞよ」

ラヴォスが暴走すると言っても信じない者や、天空だから安全だと思い込み、逃げない者がいる。そう考えたジールはハレーションを使った。

空飛びつつハレーション
 虹色の環が広がる。

ラヴォスが暴走して天空がなくなる。ので、ハレーション!

ラヴォスが私のせいで目覚めてしまいますよ。ハレーション!

ダルトンが悪い! ハレーション!」


皆の者よく聞け、わらわは、未来を見てきた。

未来はとてつもなく、ひどい世界になっている。

生きている人々は皆、困っている。

わらわは思った。恵まれてるそなたらなど、どうでもいい。

苦労知らずのお前たち等どうでもいい。



わらわは、未来で王になる。

こんな時代、ダルトンにくれてやる。


「わらわの苦労を知らぬ者は死んでしまえ」


暴君イメージしかない国民にとって、ジールは乱心している様にしか見えないだろう。
たからこそ、ハレーションの効果があるのだろうが…

「おいそこ! 地の民をシェルター(温暖区域)から追い出したな! 後でハレーションを浴びせるから覚えとけよ!」

「地の民をいじめた奴は皆ハレーション地獄を味わわせてやる。」


ボッシュとサラはバリア用の魔法を準備している。

ラヴォスのエネルギーに耐えるには広範囲なバリアでは魔力が持たない。

「サラ様が地の民を守ろうとしている!
ラヴォス神が世界を破滅させるのは本当なのかもしれない!」
「サラ様だけに任せる訳にはいかない! オレも!「私も!

ラヴォス防衛に必要なエネルギーが貯まる。


〜海底神殿〜

ボッシュ
「兄さん達、また会いましょう!

ハッシュ
「じゃ、時の最果てでな!

ガッシュ
「ヌウとして!

ボッシュは魔神機に突き刺した赤い剣が変化していくのを見ていた…



-



――――――――――――――――――――――――――――

ラヴォス



-


程なくして海から光の柱が天を貫いた。

光の雨が大地に降り注ぐ。

雪の地面が溶けていく

地響きで立っていられない地の民

魔法使い達は力を加減しながら、器用に浮く

ラヴォスの雨はいつ終わるのか。

砂煙で周りが何も見えなくなっても、衝撃はシールドを通して空気の振動として内部に伝わる。

耳を塞ぎ、蹲る人々。恐怖で怯える。

5分経過
景色は見る影もなく崩壊し、山々の輪郭が変わっていく。
ラヴォスは変化なく、光の攻撃をしている。

10分経過
ラヴォスは変化なく、光の攻撃をしている。
ジールもサラも汗を流す。
体からオーラがでて、長い髪が上になびく。
周りを見る余裕はなく、目を瞑り集中する二人。
山々は蜂の巣の様に穴だらけになる。


更に10分経過

大地はめくりあがり、ジール達のいる足場以外は谷の様なクレーターになった。

高さ10mの高台に東京ドーム1個分の広さのシェルターを建設したかの様に大地に落差が生まれている。

多くの山々は崩れ落ち、そこを住処にしている魔族も多くが死に絶えるだろう。


魔法使い達は疲労を貯め、目が虚ろで視線が定まらない。
魔力は殆ど使い果たして、意識が朦朧としている。
ドーピングの魔法で意識を繋ぎ止める。
だが一人、二人と、次々に力尽きて倒れる。

地の民は無力だった。サラやジール、その他の魔法使いを心配することしかできなかった。

更に10分が経ち、バリアシールドがボロボロになる頃、魔法使いで立っている者は殆ど居なかった。サラもジールも同様に魔力が尽きて倒れた。

ラヴォスの攻撃は未だ収まる気配がない。
このままでは皆が死に絶える。

「お、お母様…このままでは…

「わ、わかって、おるわ…

ラヴォスの攻撃は生命の99%を絶滅させるエネルギーがあった。
ジール達の魔力で防衛しても、絶滅を98%に抑えられるかどうかのレベルでしかない。


サラは思った。この時代に戻ってきたのは偶然ではなく必然なのだと。
ラヴォスゲートに飲み込まれた後、人々はラヴォスの攻撃で死んだ。
未来に王国の歴史を語り継げる者が誰一人居なくなるまで殺されてしまったのだと。

全てはラヴォスを覚醒させる実験から生まれた悲劇。自分達の責任は免れない。

人々は実験を強行した王宮を恨みながら死んでいき、その魂が無念を晴らす為に自分達をここへ導いたのではないかと。罪を悔いて反省するか、さもなくば責任を取ってラヴォスを倒せと。それが無理なら命を駆けて人々を守れと。
みんな死んだのだから、今度はお前が死ぬ番なのだと。

【お前達が私達を殺したのだから、今度は私達がお前達を殺す番だ】

サラ
(お母様…この惨状を招いた私達は途方もなく罪深い…)


ジールはサラが何を考えているかは分からなかった。しかし、きっと物事をわるい方向に考えて絶望しているのだと思っていた。

ジー
(わらわは思うぞ。わらわがラヴォスを呼び覚まさなかったら、ラヴォスはしっかり睡眠時間をとり、未来で目覚める時間が前倒しで早くなるだけじゃろうと。)

ジー
(余計な事は考えずとも、やれることはもう少ない。魔力はもう無いんじゃ。すっからかん。後は運を天に任せるのみぞ…)


ジールはサラを見て笑った。

サラ
(こんな時に笑うなんて、やっぱり私、お母様の心なんて分からないや…)

サラもジールに笑顔を向けた。


ラヴォスの光はバリアを貫き、人々を巻き込んだ。
サラとジールも巻き込みながら…





「まだ、まだ、終っとらんぞ!」
ボッシュは透明魔法を解除した。そばに隠しておいたシルバードを起動し、サラとジールを乗せた。


ダルトンはその光景を見ていた。

「所詮人間はこの程度か…」

ラヴォスの光がダルトンに直撃した。

ダルトンは無傷だった。

ダルトンは何かの呪文を唱えた。

その瞬間、時が止まった。

ダルトンはサラとジールに歩み寄ると手をかざした。

タイムマシに乗りこんだサラとジールの体は光に包まれ、消滅した。

気付くとサラは見慣れた場所にいた。ラヴォスの攻撃に備えてバリアを張る予定の安全地帯にいた。ジールも隣にいてハレーションによる避難誘導が終わったばかりの状態で、まもなくラヴォスが暴走を始める時。

腰が抜けた様にサラは倒れ、、ジールもまた同じ様になった。

サラとジールは同じ気持ちを察した。これから起きる未来を見て絶望していた。

ジー
「い、いまのはどういうことじゃ? わらわは未来を見てきたのか?

サラ
「なぜかは分かりませんが、私達は過去にタイムリープした様です。

未来での記憶を過去に引き継ぐ現象、タイムリープ
魔学の歴史にもその様な現象の記録は残っていない。
夢が幻か、もしこれが未来視としたら、ラヴォスとは正面から戦えという暗示かもしれないと二人は察した。

ジー
「済まないがボッシュ、後の事は任せた。



ラヴォス戦、海底神殿〜

ラヴォスがタイムゲートを発生させ、この時代のサラとジール、ジャキ、三賢者が飲み込まれたのを確認すると、サラは走りラヴォスの眼に触れた。
ラヴォスと意識を繋げ、ラヴォスが眠るように暗示をかける。
ジールはラヴォスからの攻撃に備えてサラと自身にバリアを張る。ラヴォスの光の攻撃で神殿の天井に穴が空き海水の流入に備えた特別仕様のバリアを張る。

バリアを作り終えた瞬間、ジールは自己を見失っていた。
ラヴォスに心を乗っとられていた。

ラヴォスには生物の意識に繋がり操る力があった。その能力はサラと似ているが、サラが繋げられるのはラヴォスだけだった。

ラヴォスジールに意識を繋いだときラヴォスジールの心を共有した。
ジールの国民を守りたいという純粋な感情、一度は守りきれず失った悲しみと絶望。
ラヴォスは敵であるジールの心を支配するつもりが、ジールの強い念に支配された。

ラヴォスがサラの心を奪えなかったのは、既にサラの力で意識がリンク(同化)していたからで、サラの存在を自身の一部として認識していたからだが、その一部も含めてラヴォスの意識全体そのものが、ジールの念に支配される事になる。

とはいえ、完全に支配できるわけでもない。
強い気持ちを常に維持することができない様に、ジールがラヴォスを支配できるのも一時的なものである。

ラヴォスの意識とジールの意識がせめぎ合う。

ラヴォスは自身のエネルギーを抽出する外敵を殲滅したかった。ジールはラヴォスから人々を守りたい。
互いにラヴォスエネルギーを奪いあう様相になる。

ラヴォスは光の攻撃をしたい。
ジールは人々を守りたい

ラヴォスは光の攻撃をしたい + 人々を守りたい。
ジールは人々を守りたい。


ラヴォスは天に向けて攻撃を放つも、ジールはラヴォスエネルギーを使い神殿で攻撃を防ごうとする。

物質変化の術式を神殿に描いたジール。その術に意識を集中し、神殿を変形させ、ラヴォスを包み込もとうする。

ラヴォスは神殿に包まれる。光の攻撃で神殿を破壊するも破壊した部分からすぐに神殿は再生していく。

ラヴォスエネルギーを用いた神殿はラヴォスの攻撃を鉄壁にガードする存在となった。

ジールはラヴォスを人のいない遠くに追いやりたい。

神殿はラヴォスを抱え込んで浮上し、空えと舞い上がる。

このまま空の果てに連れて行くつもりのジール。

だが、いずれ自身は寿命で死ぬ。ラヴォスの寿命は果てしなく長い。寿命があるのかさえ判らない。いずれラヴォスを支配できなくなる未来が来て暴走を止められなくなる。

ジールは、自身の意識を神殿内に閉じ込め、神殿と同化する事でラヴォスを永遠に支配する事に決めた。

神殿に意識を転移する術を使い、サラの前から姿を消した。

ラヴォスを支配できている今の内にラヴォスエネルギーを抜き取るだけ抜き取る必要があった。

そのエネルギーでジール神殿はラヴォスが容易には抜け出せない程の硬い質へと変化した。ラヴォスを未来永劫、神殿内に封印できることを期待して、また、誰かがこの封印を解かない様に神殿への侵入者、外敵を排除できるように要塞になる形に変形させた。

サラはジールが神殿になるのを止められなかった。
ラヴォスと意識を繋ぐというのは、ラヴォスが意識を繋いでいるジールともまた繋がるということ。ジールの気持ちが判りすぎて、止める様な無粋な真似はできなかった。
止めるにしてもラヴォスへの対処方法も判らずでは無責任でもある。
サラはジールに感謝と別れ告げると、この状況を民に説明する為、国へ戻った。






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*1:では作戦開始じゃ