クロノファン2022

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時をかける王女(ジール、サラ、ボッシュは、魔神機実験の失敗からラヴォスゲートでDC1000年に飛ばされた。)

https://syosetu.org/novel/173498/

元ネタは↑ 作者の許可なく勝手に続きを書いてみた。



ティーナ村のタンスから出てきた3人はそこで魔族と出会う。その魔族には見覚えがあった。ジール王国で生物兵器として産み出された一種に似ていた。ジール王国について知る者は誰も見つからないが、封印のピラミッドや地殻からはラヴォスの気配がしたりと、確かにジール王国時代の痕跡はあった。

村人から千年祭に行けば世界中から人がくるので何か情報が手に入るかもしれないと聞く。。千年祭のある大陸に行くには船に乗らなければいけない。。だがガルディア行きの船は停止中だった。ヘケランという周辺一帯を縄張りにする魔族がいて船の往来を妨害しているという。ジールはお仕置きの為にヘケランの住みかへ向かった。

ヘケランはボコられると命乞いを始めた。400年前にラヴォス召喚を試みて消えてしまった魔王、その魔王が生きて魔族を統率してくれたら地上は今頃魔族の楽園になっていて人間の船なんか往来していなかった。ヘケランは、それがくやしくて、つい船に八つ当たりしてしまったのだという。
ラヴォスを知る魔族の存在に興味を感じつつ、ジール一行は千年祭へと向かった。クロノとマールに出会い、ルッカのブースにてタイムゲートを目撃した。もしかしたら元の時代に帰れるかもしれない。三人はいてもたってもいられず、クロノ達の帰りを待った。しかしクロノは王女誘拐容疑で逮捕され、それどころではなかった。ジール達は当日のクロノを知る目撃者として、クロノの弁護士ピエールから裁判にて証言を求められていた。

~滞在中の宿屋にて~

「はあ? だからわらわはジール王国の王様だ。え?ジール王国がどこにあるかって?それはわらわこそが知りたいことじゃ!」

ピエールの指示で法廷での証言(スピーチ)の練習をさせられていたが、嫌気がさしていた。

「手間をかけさせおって!」

怒り心頭のジールはピエールにスリプルかけて放置した。
クロノの自宅やルッカの自宅は既にサラとボッシュが尾行して見つけていた。サラはルッカに古代でのイキサツを話していた。ルッカジールが裁判証言に協力してくれる事も知り、安心していた。サラとルッカは仲良くなり、ジール王国が存在する時代をを見つけたら、まっさきに教えるという約束をした


クロノの裁判には大臣の思惑が絡んでいた。 400年前に魔族は人に姿を変えられる魔法を開発していた。大臣に成り済ましたヤクラはクロノ達が倒したが、ヤクラの子孫もまた、大臣に成り済まして王宮に潜入していた。ヤクラの先祖の死を当時間近で見ていたコウモリ魔族らの言い伝えで、赤髪クロノの存在に気を付けろという伝承がヤクラ一族に残されていた。マールから時越えの話を聞いた大臣ヤクラは王女誘拐事件を利用し、この機会に乗じてクロノを殺すと共に、クロノに似せた魔族とクロノをすり替える計画を思いついた。

ルッカはクロノ逮捕の件に関して違和感があった。。王国側が事を誘拐事件にするとしても、王宮にまでわざわざマールを連れてくるクロノ。逃亡する意思はないのは明白で身柄を拘束する必要がない。マールと行動を共にした事情は聞かれるとしても、マールの証言が得られるのだから、不起訴になるだろう。裁判すら行われず釈放されるのが当然で、少なくとも24時間以内に解放されると思っていた。

中世で人に化ける魔族の存在を思い出したルッカ。王族に化ける魔族もいた。王家そのものに不信感を抱き、盗聴盗撮機能付ラジコン(ころころと転がる駆動方式にてラジコン音が静か)名称『ころころ見聞きします君』を使う。


ルッカは大臣ヤクラの命令で動く魔族らの密談を聞いてしまった。
王家の体制はいつから魔族に乗っ取られていたのか? 行政の全ては魔族が裏で牛耳っている可能性。いろいろ考える事はあるが、とにかく今はクロノ救出が最優先だった。だが、クロノを助けるっていってもどうやってやればいいのか判らない。警備は物凄く厳重である。武器を使っての強行突入なんて上手くいくと思えない。失敗すればルッカ自身も魔族に殺されかねない。。無事にクロノを救出成功したとしても両親は体制を支配している魔族からどんな罰を受けるか判らない。

悩んでいた頃に出会ったサラ。サラはルッカの相談に乗ってくれた。サラは奇跡の力(魔法)でクロノ救出に力を貸してくれるという。

サラは城にスリプルをかけ、全員を眠らせた。クロノを連れて、クロノのお母さんもルッカの両親も、みんな連れて400年前の時代に逃げるのだった。

眠っていたマールとクロノはボッシュが念力で抱えていた。起こして動画類を見せて状況を説明した。

「さあ、皆で!タイムスリップ!」
時の最果ては、大勢の人のゲートに入ったせいで磁場が捻れて来れる場所ではない。
厳密には、無限に広がる時空間の中で発生した些細な磁場の変化をハッシュが感知し、手招きする場所。

時の最果てには、元々酸素や温度すらない絶対0度の世界。人が来ると即死する様な場所だった。ハッシュはラヴォスに飛ばされた直後、バリアを展開するも、死ぬのは時間の問題だった。

ハッシュは意識を、空間そのものに転移させ一体化した。
話す事も聞くことさえできないが、魔力を使って空間に干渉する事はできた。
自分の様な犠牲者を生まない為に、ゲートからここに来る者を押し出す事ができた。
クロノ達が都合良く時間の中を旅していたのは、このハッシュ空間による押し出し効果のお陰であり、もしハッシュがいなければ無の空間に放り出されたクロノ達は即時死ぬ可能性があった。

ハッシュは遥か未来に飛ばされたわけてばなく、時空間の隅っこに漂っている存在だった。
原作の様な時の最果てが作られるのは、未来にてガッシュがゲートを開けたとき、ハッシュに起きている現象を理解した後、ガッシュが工夫した事に関係していた。なので今現在1000年の段階で大勢でゲートに入っても、ハッシュパワーで押し出され、中世に向かう事になる。

〜中世ガルディア〜


山の中。どつやって脱獄に成功したのか、疑問していてマールに古代人の超能力が披露される

マール「うわー!すごいーい!」

クロノ脱獄成功後、中世の山中で何度も「すごいーい!」を連呼していたマール

サラ
「もし良かったらマールさんも、やってみます?

マール
「え! できるの!?

サラはマールの額に自身の額を当てて念を送った。
マールの頭の中に古代人の知恵が流れ込んできた。
古代人は至近距離にいる者とテレパシーができる。その力を応用すれば相手の脳内を書き換え、魔法の才能を開花させる事ができる。サラがラヴォスに干渉しラヴォスの制御できるのも、この力を応用したものであった。



サラ
「使える魔法の種類に限りがあると思いますが…」


マールはアイスを唱えた。
森の木々が氷る。
マールはケアルを唱えた。氷った木が何事もない状態になった。

マール
「わー! これすごいー! ルッカもやってみなよ。」


ジー
「どれ、では今度はわらわがやってしんぜよう。」

ジールはルッカの額に重ねた。

ルッカは火の魔法を覚えた。

ルッカ
「こ、この技術は物を溶接したりするのに便利かもしれない…巨大な工房が必要なくなる!?」

ボッシュ
「ではワシはクロノ殿へ…」

ボッシュがクロノに額を重ねるとクロノは雷魔法を覚えた。

ルッカ
「あー! 電気のコントロールいいな〜。私もそれ欲しいー!」

ボッシュ
ルッカ殿は欲張りじゃのう。ほれ、ワシの額に重ねてみなさい。」

クロノ達は初心者ができる一通りの魔法を覚えた。特性の差にて、反対属性は苦手だったりもした。

マール
「もっと凄い魔法は覚えられるの?テレポートする魔法とか。」

ボッシュ
「残念じゃが、現代人と古代人は身体の作りが違うみたいじゃて、覚えられる物に限りがあるんじゃ。」

マール
「練習してもダメなの? 

ボッシュ
「多分無理じゃろうな…。」

〜ガルディア城前〜

サラ
「話を整理するといつからかガルディアは魔族が実験を握っていると?

ジー
「人に成りすましてても近付けば気配で魔族かどうか判る。殺してやろうか?


~ガルディア城中~

サラ『特に問題があるように思いませんね…

サラは意識を最大まで集中すれば上下半径2000kmまでの気配が判る。ラヴォスの魔力は膨大で3000km以上のマントル地層にいても判る。
サラは南東1500kmから魔族にしてはやたら強い気配を感じた。何となく、懐かしさも。

ジャキの気配。

サラはペンダントに溜め込んだ魔力を使い、魔王城の真上にテレポートした。

突然現れた姉の気配に魔王ジャキは気付いた。階段を走り、屋上を出て、空を飛んだ。


魔王にとっては30年ぶりの再会で、サラは時の重みを罪深く感じていた。

ジャキ
「私はこの地に飛ばされて、早々に魔族達に目をつけられて…」


ジャキは中世時代での経緯(言い訳)を説明した。


この時代に来て早々に魔族達に命を狙われ、隠していた魔力(ジールに利用される恐れがあった)を使い、身を守った。魔族王のビネガーはジャキの大きなチカラを見るなり、将来性を感じ、城に連れて行き、手元に置いて育てた。ジャキ自身、ダルトンがしばしばゴーレムを従える光景を見ていたので、人造兵の子孫ならばと遠慮なく使ってやってもいいかなと思い、好き勝手させてもらっていた。


サラはジャキをどうするか悩んだ。
魔王として人間世界に多大な迷惑をかけていること。死刑では到底償えない罪を犯していること。姉として責任を取らなければならない。

サラ
「ジャキ、貴方がした罪は私が償います。

ジャキ
「それはどういう意味…まさか私の代わりに人間を頭を下げるのか!? 奴らは姉様を人間とは認めないぞ! 処刑されるぞ!


サラ
「…

ジャキ
「いくな! 姉上!

サラは振り返ることなく、飛び立った。


ーガルディア王宮ー

「これが魔王の姉である証拠です。」

床一面を氷にしてみせるサラ。

王宮は突然の事態に困惑していた。自身を魔王の姉だと名乗る者がやってきて、罰を与えろという。
王宮の大臣達は話し合いの結果、一つの提案を出した。

【サラの力を使い魔族を滅ぼすこと】

サラ
「恐れながら、魔族の中にも良い者は居ます。私は力を憎しみを生み出す事に使いたくありません」

大臣
「つまり、魔族と人間が融和できるように和平交渉を求めるということか…。どうなさいますか王様…


「この様な事態、ガルディア建国以来、始めてのことだ…。サラよ、そなたが本当に魔族を説き伏せられるのであれば、私はそれを信じたい。

大臣
「では、まずは和解書の調印からはじめますか…サラ殿、そなたの弟、魔王に和解する意識があるのなら、その書簡を持って参られよ。

そんなこんなで魔王軍とのガルディアの争いは休戦した。これからジャキは魔族を説得する仕事をし、サラ、ジール、ボッシュは混乱した魔族社会の治安を監視、監督する仕事をすることになる。人間側は酪農や農産業技術を魔族の文化を持ち込み、魔族が人間を食べないよう、襲わない様に教育したりした。、互いに我慢するところはあったが、ちゃちゃくと丸く収まっていったのだった…

未来は大きく変化した。
クロノ達の未来に『ホテルリゾートへけらん』が出現した。

へけらんの住処である鍾乳洞は人気の観光スポットになっていた。

目玉のアトラクションは渦潮で、鍾乳洞の奥の渦潮に潜ると、隣の陸地(ルッカの自宅近辺の浜辺)まで、あっという間に連れて行ってくれる。この天然のウォータースライダーは世界中で人気があり、へけらんリゾートの観光収入はガルディア東部を潤わせ、現代ではホテルが乱立するビジネス競争時代へと突入している。





その頃、ルッカは現代から未来に行けるゲートを見つけた。※(世界には他にもゲートがあるかも説)を信じ、ゲートを探索する装置を開発した。
未来での冒険をした後、クロノ達は中世のサラに会いに来た。



サラ
「まあ、クロノさんにマールさん、ルッカさんお久しぶりです。それから貴方は…」

ロボ
「はじめまして、ロボと申します。

ジー
「鉄の生き物が喋っておるぞ

マール
「未来のロボットなの。

ジー
「千年祭での歌う奴といい、人間はなかなか凄いものを作るな。

マール
「あれはルッカが作ったの。ゴンザレスっていうの!

ルッカ
「まってマール、話がそれてるわ。

マール
「あ、そうだったごめん!

クロノ達は未来の世界がラヴォスに滅ぼされていた事を説明した。


サラ「え? 未来の世界が?」


ジー
「まさかラヴォス神がそんな事を…わらわはその様な危険なものに縋ろうとしていたのか…

サラ
「お母様、だとしたらジール王国の民たちは…

ジー
「信じたくないが、この時代の歴史に我らの歴史の記録が欠片も残ってないことを考えると…


サラ
「クロノさん私を未来まで連れてってくれませんか? この目でラヴォスの被害を確認させてください。」

ジー
「まて、お前はこの時代で魔族と人間を束ねる仕事が残っておるだろうが。戦争は終わったとはいえ、あくまで名目上のことだ。わらわ達が今この地を離れる訳にはいかん。


言い争っているとボッシュが名乗りをあげた。

ボッシュはサラやジールと比べると戦力が遥かに劣っていた。

〜時の最果て〜

「こ、この気配はまさか!」

ボッシュは周りを見渡すと走りだし、扉の先にいる時の案内人の元へと走った。

ボッシュ
「お、お前さんハッシュか?」「よく生きておった。」

時の案内人
「はて? お前さんは一体…」

ボッシュ
「何を訳の分からないことを言ってるのじゃ!   

 ワシじゃよ! 弟のボッシュじゃ。
 お前さんあれからどうなった? ワシがタイムゲートに飲まれた後、お主もタイムゲートでここに飛ばされて来たんか?」


「はて? 弟…、ゲート? ワシは時の案内人じゃが…」

ボッシュは気付いた。この空間全体からハッシュの魔力を感じる事を


ルッカ
「どうしたのボッシュ? 貴方顔色悪いわよ?」

ボッシュは思った。ラヴォスが生み出したタイムゲート、ハッシュが飲み込まれた先に恐らく出口は無かった。
時の狭間で永遠と彷徨い、肉体が朽ち果てる前に、せめて同じ様な被害者を出さない様にと、魔力空間を作り出した。時の中を彷徨う者を集め、案内する仕組みを作ったまではいいが、自身の記憶までは残せなかった。

スペッキオは飲まず食わずでも千年生きれる特殊生物。主人であるハッシュがこうなって、さぞ、寂しかったに違いない。

スペッキオ
「大丈夫。世話をしてくれる人がいた。もう100年くらい来てないけど。」

ボッシュ
「一体誰がお前さんの世話を」

スペッキオ
ガッシュ!」

ボッシュ
「本当か! ガッシュがここに? ガッシュは今どこに?」

スペッキオはガッシュがやってきたゲートを指差した。

スペッキオが差したのは原始時代へと続くゲートだった。
「ここから良くごはんを持ってきてくれた。その後、こっちのゲートを良く通ってた。」


〜未来のゲートの出口〜

ゲート前の扉、古代ジール王国のセキュリティシステムに使っていたの同じ模様の扉を発見したボッシュ

ボッシュは悟った。
ガッシュは未来に飛ばされた後、どうにかして元の時代へ帰ろうとゲートの痕跡を探したに違いない。ゲートを開く装置かあるいは魔術を開発し、時の最果てへと続く道を見つけた。

最果てには原始時代から既に誰かが、やってきていたのかもしれない。時を彷徨う者が最果てにて保護され、そこから元の時代へ帰れたか、そこからどうしたかは分からないが、、きっとガッシュもそうだったのかもしれない。ガッシュは原始時代へと続くゲートを見つけたはいいもののジール王国へと帰る道は見つからなかった。

最果てから古代人の誰かが助けにきてくれるのを信じていたのかもしれない。
ジール王国の紋様を扉に残して、自身の存在に気付いて欲しいというメッセージを残したに違いない。

ボッシュとクロノ達は未来を手分けして捜索した。

南部の大陸のドーム内にヌウを発見した。

ボッシュ
「ヌウ? いや、普通のヌウとは違う。これは…

ボッシュ
「これはガッシュの魔力…あやつ死ぬ前に自身の意識をヌウの中に押し込めたな。」

ヌウには目的がプログラムされていた。
時の翼シルバードの制作とメンテナンスだった。

時の翼、シルバード。
シルバードが行ける時代は時の最果てにあるゲートから行ける時代である。
シルバードは時の最果てとシステム的にリンクしていて、古代には行くことはできない。
今行けるのは原始、中世、現代、未来への4つだ



ガッシュもハッシュも既に肉体は滅んでいた。

ジール「そうだったか…未来にはガッシュが、そして最果てにはハッシュが…」

ボッシュ
「とても残念なことですじゃ。」

ジー
「だがまだ終わった訳ではなかろう。ルッカ殿が開発したゲートを探す装置、あれがあるではないか。」


古代へのゲートが見つかるかもしれない

ジー
ボッシュ、せっかくだからその装置で原始時代も調べてきたらどうじゃ?。どんな世界が待っておるのか、わらわは興味津々じゃが今はまだここを離れられん。」


クロノ、マール、ルッカ、ロボ、ボッシュは原始時代へと向かった。シルバードは三人乗りなので2回に別けた。


ルッカ
「なんだか騒がしいわね…」

ボッシュ達の場所から原始人の村へは少し離れている。

ルッカ
「…ロボ、ちょっと様子を見てきなさい。」

原始人は何やら宴の用意をしていた。

ロボは走って戻ってきた。原始人を引き連れて

「うんばばうんばうんばば!」
(おまえ達あやしい奴!)


原始人達十数人は5人とシルバードを取り囲んで槍で威嚇した。

「うんばば!うんこばば!? ばつんつば、はらま、たさら、したあら!」
(お前達どこの部族の者だ?まさか、恐竜人の手先ではないだろうな!)


ルッカ
「どうしよう、何言ってるか全然わかんないや…」

いきり立ってる村人の間を割くように族長の娘エイラが現われた。

エイラ
「がばちょ、がばんちょ、ちょんばから、くじら?
(エイラ質問ある、お前たちの後ろの、デカイもの、なに?くじらか?)


エイラはシルバードを指してジェスチャーする。

クロノ達がどうして良いかわからず、もごもごしていると

エイラ
「ちょなんかん、さむにだはむにだおっぱー?」
(お前たち、もしかしてエイラの言葉通じてない?)

エイラがシルバードに近付いてコンコンと叩いた。
匂いも嗅いでいる。
かじりつく。

エイラ
「う、食べられないし、おいしくない…」

エイラはクロノ達のニオイを嗅いだ。


「おまえたち、恐竜人の匂いしない。かといってエイラ達とも匂い違う…」

エイラ
「みんな集まれ! 新しい部族の発見だ!」


エイラの掛け声と共に村人が一斉に集まる。

クロノ達はどうしていいかわからずビビリまくる。

ルッカ
「ねえ? 逃げた方が良くない?」

マール
「私達、もしかして丸焼きにされて食べられる?」

ボッシュ
「安心せい、なんかされたら魔法でズドンじゃ。」


村人はクロノ達の予想に反して歓迎ムードだった。
村は恐竜人に対抗する為、部族同士の繋がりを求めていてクロノ達を宴に歓迎した。だがクロノ達は言葉が理解できず、どういう意図があるのか分からなかった。


エイラは踊り歌い、その後酒をメンバー達に注いだ。
クロノ達は酒飲みファイトに巻き込まれてエイラと共に酔いつぶれた。

翌朝、二日酔いと共に目覚めるメンバーは、エイラと族長から根堀りはほり質問攻めにあった。


ルッカ
「こ、困ったわね…」

マール
「なんだか真剣そうに話しているけど、

ボッシュ
「酒もたらふく飲めたし、このままバックレるかのう。」

ロボ
「言語パターンを収集しました。今から原始言葉を翻訳できますが、どうしますか?」

ロボ翻訳により、クロノ達はこの時代で起きている事態をおおよそ理解した。

ルッカ
「恐竜人と人間の戦争か…」

マール
「手を貸しちゃう? 私達、魔法のやり方覚えたしめっちゃ強いよ!」

ボッシュ
「争いは好かんのじゃが…」


クロノ達が難色を示していると、遠くから悲鳴が聞こえた。

村人がエイラの元にかけよる

「大変だエイラ! 北の村に恐竜人が火を放った。しかもキーノを連れ去っていった。」

エイラ
「どうしてキーノが!」

「恐竜人のアザーラが言ってた。キーノを返して欲しければティラン城へ来いと。」

エイラには心当たりがあった。以前に村の近くの恐竜人の巣穴に単独で攻め込んだことがあった。その際、親玉のアザーラに逃げられた。。エイラと親しいキーノを捕まえて復讐するつもりである。

「エイラ行く! ティラン城に乗り込む!」  

ルッカ
「一人では危険よ!」

マール
「私達も協力するよ!」

ボッシュ
「ワシは酒の酔いを冷ましたい!」

けれどティラン城までここから2000km離れている。プテラで2~3日かかるそう。
それでも構わないメンバーだった。しかし出会ったばかりなのにこの信頼関係は異常だ。メンバーを突き動かしたものは好奇心だった。人助けの使命感2、プテラの背中に乗りたい気持ち8だった。


一行はエイラに連れられ、北にある山からプテラに乗った。 

ルッカ
「え? マジこれ乗るの?

マール
「だ、大丈夫かな…

ボッシュ
「ワシ、高いところ苦手じゃー!(でも大人として若者達を引率せんと!)」



広大なマグマの湖からの上昇気流でプテラの高度はぐんぐん上昇していく。

アザーラのいるティラン城は高さ8000mにそびえ立つ立つ崖の上にあった。

外敵からの侵入を防ぐ為にも建設されたのかもしれない。、この高さは人の足で容易に昇り降り出来るものではない。この場合、恐竜人にとっての外敵とは人間だけを示す訳ではないのかもしれない。支配の行き届かない恐竜人との戦争があり、この高さそのものが要塞機能なのかもしれない。

良く見ればそびえ立つ崖はただの崖ではなかった。崖には窓らしきものや、バルコニー的なものが見えた。その数は数え切れない程ある。、大砲の様な射出システムもあった。近付けば撃墜される恐れがある。


ボッシュはメンバーをバリアで保護した。
だが、何も攻撃されなかった。


ルッカ
「ロボ、酸素濃度はどうなってる?」

ロボ
「酸素濃度は平地の30%です。」

標高8000mなのに寒くはなかった。マグマ地帯だからだろうが、いくら恐竜人でもこの酸素レベルでは住めないと思われた。


マール「アザーラってこんな場所でも、平気なの?、

ルッカ「判らないけど、もし平気なら化け物じみてるわね…けど多分、そうじゃないと思う。きっと時間がないのかも…


マール
「とういう意味?

ルッカ
「元々あの城の酸素濃度は今よりもっと高かったのかもしれない。例えば草食の大型恐竜が草を食べ過ぎて酸素が生成されなくなったたり、火山噴火とかで大気の酸素が燃えてしまったりで…

マール「つまり、昔は住めたけど今はもう住めない場所になっている?

ルッカ「恐竜人が天井の住処を失って地上に降りてきた。でも、地上は既に人間の住処になっていたから縄張り争いが起き始めた…。

マール
「アザーラは一体何がしたいの? 

ルッカ
「…焦っているのかも。恐竜人の住める環境は今よりも上が望めないこと。人間には知恵で敵わず、いずれ人間達に淘汰、亡ぼされてしまうことを…

マール
「でもエイラは共存の道を探してるって、

ルッカ
「頭では理解できても信用できないのでしょうね…。現に恐竜人達の文明社会は一度滅んだ歴史があるみたい。あの城がまさにその象徴で、アザーラ自身があの城と自分を重ねてるのかもしれない。衰退する文明にアザーラ自身も向かっているから怖いのよ。

マール
「でも、それって単なる思い込みじゃあ…

ルッカ
「そうね。でも思い込みで人間は幾度となく戦争を起してきた。。人類史は思い込みで成り立っているのよ。それが恐竜人、アザーラにも当てはまるというだけのこと。

マール
「私達にはどうにもできないの?

ルッカ
「…とうにか、できたらいいわよね…

6人が降りると、エイラは真っ先に門へと走った。

ルッカ
「まって! 一人では危ない!」

マール
「ねえ? 恐竜人ってどんな顔しているのかな?

ボッシュ
「…」
ボッシュプテラに酔ってゲロをほんの少し飲み込んだ。


全員が城に入ると門が閉じて鍵が掛かった。

ボッシュ
「どういうことじゃ?」

ルッカ
「え? まさか自動ロック?」

マールとルッカが反作用ボムを使い、ロボがタックルしてみるがビクともしない。

ルッカ
「これが原始の科学技術なの? これってもしかして私達の時代よりも上なんじゃないの?」


マール
「恐竜人って一体何なの? 魔法使える様になったけど、自信なくなってきた。

ボッシュ
「気をつけるんじゃ。こんな丈夫な扉を作れるのなら、きっと武器等も作れるじゃろうて。」


5人が玄関でもたついているとエイラが立っていた。
エイラは既にキーノを救出していた。


いずれにせよメンバー閉じ込められてしまった。アザーラの目的は酸欠で殺す事かもしれない。アザーラは用意周到に計画している。出られる通路がないから、この城に誘導したのかもしれない。

マール「みたところ窓があったけど…

窓に見えたのは全て特殊なバリアで守られた何かで、破壊することさえできなかった。

ルッカ「…上へ行きましょう。外にいるとき渡り廊下が見えた。もしかしたら、そこからプテラで外に出られるかもしれない。」

楽観的観測かもしれない。バリアで渡り廊下全体がシールドされているかもしれない。


エイラ
「ところでこれなんだ?


エイラがレバーを引いたのは恐竜人が作り出したエレベーターだった。
どういう原理で動いているのか判らないが、エイラはそれに乗り込み上へ向かっていった。


キーノはエイラを追いかける様にエレベーターの上に飛び乗る。二人はクロノ達を置き去りに上階へ向かった 
 


アザーラ
「ようやく来たか、猿共…。ここがお前達の墓場になるのだ

エイラ
「エイラ死なない! キーノとクロノ達と一緒に帰る!

アザーラ
「どのみち逃げ場なんてないのだよ。」

エイラ
「…? どのみち逃げ場がない?

アザーラ
「この城がなぜ今でも生きているか分かるか? この城は単なる石でできてない。物なんかじゃないんだ。我ら先祖が生み出した尊い生き物なんだよ。それが死んでしまうんだ。」


エイラが喋ろうとするとキーノが割って入った。

キーノ
「アザーラ、僕を誘拐しておいて殺さなかったのはなぜだ? 僕を殺したとしても、ここに皆を閉じ込める事はできたはずだ。何故なんだアザーラ」

アザーラ
「…

キーノ
「アザーラ、君は仲間を連れもせず、なぜ一人でここにいるんだ! 

アザーラ
「…

キーノ
「アザーラ、君は何を隠しているんだ。人間にも恐竜人にも…

アザーラ
「…私は…

エイラ
「もういい、キーノ。こいつは大地のオキテによってここで死ぬんだ。エイラと戦って死ぬんだ。

アザーラ
「そうだな…私は死ぬ…だかな
 私は一人では死なん!

アザーラの背後にある塔から動く石像のティラノサウルスが現れた。その巨体はゆうに10mはある。
アザーラはテレポートし、石像ティラノの背に乗った。

☆アザーラは超能力が使えた☆


念力(サイコキネシス)、瞬間移動(テレポート)、テレパシー(戦闘中には触れた相手の思考を妨害できる)、そして未来予知ができた。未来予知に関してはラヴォス飛来後に恐竜人は絶滅してしまう事がアザーラに見えていた。自身が絶滅から逃げたとしても、治安の低下と暴動で恐竜人社会は混乱し、ろくでもない未来が待っている。高確率でクーデターにより処刑される未来が見えていた。超能力を駆使すれば、それら最悪を避けられる未来も作れたが、恐竜人2000万人を束ねる仕事は面倒くさかった。
言い訳したい訳じゃないけどラヴォスが落ちると1000km四方に住んでる恐竜人百万人が死ぬ。その破滅の未来が見えたのは、13日前。あまりのショックにしばらく現実逃避していた。避難誘導するのに時間的余裕はあったものの、空を飛べるティラングライダや陸上を走る乗り物生物には限りがある。徒歩で10日以上かけての大移動は国民からは不満の声が出るのは避けらない。
来たる氷河期に向けては暖が必要で大量の木々の伐採もやらなきゃいけない。それについても恐竜人の多くは不満たらたらで、人間も同じようなことして不満たらたら。常に戦争を気にして緊張状態に。
そのくせ人口規制(子作り禁止)にしても、素直に従わない奴らが多い。右大臣、左大臣はいつもあーだこーだ言うばかりで食費を節約することもなく、ぶくぶく太る。まるで大臣らは家畜であり、アザーラは飼育員みたいにな関係になってしまう。アザーラは見える未来にうんざりしていた。何をどうやっても嫌な未来ばかり見えてしまい、恐竜人を助けるのが面倒になってしまった。

アザーラは沢山の超能力に恵まれていて、それまで人生は順風満帆だった。それを全て相殺するくらいの神経を忙しく使う日々が待つ未来にてついてを恐怖していた。いっそ死にたいと何日も考えた。

そしてアザーラは先祖の地を死に場所に決めていた。キーノを誘拐し、猿のリーダーであるエイラ達を誘き寄せ、共に心中するつもりだった。計画通りに成功する未来が見えていた。アザーラにとって予知が外れたのはこれが人生で最初で最後だった。

アザーラは渡り廊下を背にしていた。エイラを迎え撃つ為に。だが、アザーラにとって背後にある塔の中はエイラ以上に重要だった。恐竜人の英知が詰まった遺産があった。たとえそれがラヴォスと共に消えるのだとしても下等な種族である猿に穢れさせたくなかった。竜の首輪を外せば猿が隙間から侵入するかもしれない。鎖を外して闘わせる事もできたが…

アザーラは念力で先祖の遺産を起動した。吹き抜けの天井に見えないバリアが張られ、プテラが着陸できなくなる。

エイラとキーノはクロノ達に先だって到着した。屋上の酸素濃度は地上の半分以外であり、二人の呼吸は乱れていた。


アザーラにとって人質キーノは殺して捨て置く事もできた。あえて生かしておいたのは、この戦いで無力な猿であるのを実感させ、悔しがる姿が見たかったからだ。

アザーラはキーノにサイコキネシスで呼吸をできなくさせた。

苦しむキーノ。エイラはアザーラに飛び込んだ。竜が回転し、エイラをふっ飛ばした。

エイラは橋の下に落ちるかと思いきやそこにもバリアが張られていた。叩きつけられる様にエイラは倒れた。

既に巨石は火を溜め込んでいた。アザーラの指示でいつでも竜は火を吐き、廊下を火の海にできる。
そこにクロノ達メンバーが到着した。アザーラは未来予知にてクロノ達が来ることも判っていた。
ロケットパンチ、ファイア、アイス、サンダーが飛んで来ることも想定済み。アザーラには先祖の遺産のバリアが張られていて、攻撃が通用しなかった。
このバリアシステムは遥か昔、魔法を使える恐竜人同士で戦争がおきたとき、、それに対応する為に作られた。
魔学科学は未来人をもしのぎ、クロノ達の魅せる奇跡の様な技についても再現できるものが、ティラン城に数多くあった。

「ちょこざいな…。城の武器庫から拝借したのか猿どもめ…」


クロノ達の魔法についてアザーラは、プラズマガンや、炎の弓矢、氷の弓矢だと思った。それらの動力源はマグマによる地熱らしいが、アザーラ自身、詳しいことは判らなかった。

アザーラの指示で、廊下一面に炎が蒔かれていく。アザーラの炎はエイラとキーノを避けていた。
アザーラは二人を殺すつもりはなかった。敗北の絶望、無力さを感じさせたかった。
炎が二人み囲み、その場から出られなくなる。

クロノ達は魔法で消火を試みるが、魔力が尽きた。ボッシュは頑張ってた

アザーラは念力を解除し、キーノを自由にした。息は吸える様にはなったが、熱い空気に苦しんだ。

気絶したエイラを起こそうと頑張るキーノ

もうすぐラヴォスが到着する。それまでアザーラは、やりたいことをやると決めていた。

アザーラは巨石竜で城の破壊を始めた。竜を回転させ、至るところを破壊していく。クロノ達の事はどうでも良いかの様に。

実際どうでも良かった。恐竜人の文明の凄さを猿に知らしめる事がアザーラの目的だった。それは既に達成し、満足していた。当初は先祖の遺産を猿から守るつもりだったが、改めて考えてみると無意味だなと思った。奥の部屋のシステムは猿に使いこなせる筈もなければ理解する頭もないのだろとアザーラは思っていた。

アザーラは先祖が守り続けた象徴を破壊し尽くし、再び、渡り廊下へと戻ってきた。



エイラ
「わけがわからないぞ」

「もうすぐ…わかるさ」
アザーラはそう言って空を見つめていた。


エイラは戦いを仕掛けようとしたが、アザーラの強さに怖じけづいていた。


『ここから逃げるチャンスをやろうか?』

ふとアザーラはエイラに提案した。まだ少し弄べると思った。

『今、天井のバリアを解除しておいた。逃げられるものなら逃げてみろ。』

どういう意図なのかエイラには理解できなかった。罠があるのかないのか計りかねていた。

『どうした?早くここから逃げないと死ぬぞ?』

エイラは逃げなかった。元よりエイラにはアザーラに伝えたい事があってここに来た。人間と恐竜人との共存についてである。人の言葉を理解できる恐竜人はアザーラ以外殆どいなかったからだ。アザーラさえ恐竜人を束ねてくれば無益な争いをしないで済む。

アザーラはエイラの言葉を静かに聞いていた。予知能力でエイラの吐く台詞は予め知っていたものの、実際に聞いてみると違った印象を受けた。

竜人と人間が共存する世界は困難が付きまとう。最初こそ上手くいくだろうが、氷河期が迫るほど食糧に困り、互いに共存の道筋は絶たれる。寒さを凌ぐ為に暖をとるにしても、木の数は限りがある。森さえ維持できない氷河期が来る時、やはり互いに殺し合う運命からは逃れられない。これらを説明したところで、互いにどうにもならない問題だと思っていた。繁殖を止めて人口数コントロールしたとしても、対応しきれない程に早いスピードで氷河期が訪れてしまい、血に染まった生存競争を強いられる羽目になる。もっと前から予知ができていれば人口規制を徹底する等の準備もできただろうが、今更どうにもならない。

アザーラは空を見ていた。アザーラの目に浮かぶ赤色にエイラもキーノもまだ気づいてなかった。

ロボのセンサーがラヴォスを探知した。

ロボ
「皆さん大変です。空に…ラヴォスがいます。

クロノ達は上空に小さな赤い光りを発見した。

ロボ
「予測約、直径1km、質量80億トン、時速5万キロのラヴォスがここへ落ちてきます。」

ルッカ
「え!? どういうこと、? ラヴォスって隕石だったの??


ロボ 
「グズグズしているヒマはありません!
ラヴォス衝突まで後60秒しかありません』


キーノ「エイラ! プテラの様子がおかしい。」「プテラ、危険の合図している。ただ事じゃない危険、迫っている。ここに居たら危ない!」

エイラ「アザーラ! お前もこい!」

訳が判らないエイラだが、この場所に危険が迫っているなら尚更アザーラを見捨てる事ができなかった。

しかし、プテラは野生の感からラヴォスの危険を察知し、エイラの指示を聞かずに飛び立った。
アザーラがエイラの視界から消えていく。

「アザーラ…忘れない」



アザーラは城と共に消滅した。




アザーラは死に際に「未来を……」という台詞を残した。ラヴォスがアザーラにぶつかる瞬間、未来予知能力が最も開花し、遥か未来までの歴史の走馬灯を見た。未来は再びラヴォスにより生物が絶滅する未来が来る。その光景を見せられたアザーラは心の中で思った『「未来を……」今さら見せて何になる。俺が知ったところでどうにもならないのに。』





ラヴォスは全長100kmのクレーターを生み出し、1000km四方が音速を越えた熱風と衝撃波で吹き飛んだ。そこにいた生物は即死した。


クロノ達はラヴォスをギリギリ避け、上空5000mにいた。。助からないかと思いきや。衝突インパクトのエネルギーは真上ではなく、地面に平行的に拡散していった。
それでもとてつもない衝撃波は避けられずプテラはふっとばされていく。それに振り落とされない様にしがみつくので精一杯だった。

ラヴォスの衝突で地表は一瞬で蒸発し、気体とも灰ともいえない微粒子が上空に巻き上げられた。
クロノ達もその灰に巻かれながら、何も見えなくなる。何がなんだか訳が判らないまま遠くへ吹き飛ばされた。吹き飛んで平地となった地面にプテラが着地する頃、メンバーは灰で真っ黒になっていた。




ラヴォス飛来後、ボッシュは言った。「ラヴォスの気配が2つあるぞ!?」


ボッシュが原始時代に来た当初、地殻に存在するラヴォスを感じていた。その違和感はほんの少しだけで、古代のラヴォスよりも微妙に気配が違う感じはした。その意味が今はっきりと判った。

未来でラヴォスは子供を産んでいた。ラヴォスに生殖機能があるならオスメスの関係性もあるかもしれない。、ハッキリとした事はいえないが、いずれにせよ古代の段階では一体分のラヴォスしかいなかった。



エイラは水辺でプテラの身体を洗っている。枯れた草の様なものでゴシゴシしている。

ラヴォスの衝突を近くから巻き込まれたプテラとクロノ達は全身黒ススまみれで、水辺でそれを落としていた。

プテラ達はエイラの世話になり、クロノ達も見様見真似でエイラを手伝った。

エイラ
「クロたち、これからどうする?

メンバーはラヴォス落下地点が気になっていた。好奇心とか、そういう類のものではなく、ラヴォス飛来以降、強烈な磁場が土壌に残っていて思考を乱された。
ラヴォス飛来前後で気分が異なる。まるで体が、ラヴォスへに吸い寄せられているかの様だった。


エイラ
「ならエイラも連れてけ。エイラも気になってた。」


ラヴォス衝突にて蒸発した地面の粒子は成層圏まで届いた。あたかも空一面が雲に覆われた状態だった。
昼間だというのに光が殆ど入ってこない

視界が悪いにも関わらず、ポイントに近付くと、目視でも可能な程に空間の揺らぎが見えた。


ルッカ
「エイラ、ゲートの先はどんな危険が待っているか分からないわ。」

エイラ
「エイラ行く、危険、大丈夫。闘う、好き!」

キーノ「エイラが行くならキーノも行く!」


マール
「それにしてもなんか、寒いな…昨日と比べて今日やけに寒くない?

ボッシュ
「もしかすると、ラヴォスのせいかもしれんな。あのあと、黒い大雨が降って、今もまだずっと曇り空じゃ。」

ルッカは雨が降る原因が判っていた。灰などの微粒子は雲と結合することで落下し、雨がふったようになる。上空に見えるのは雨雲ではなく、灰煙である。

ルッカは考古学的な見地から判っていた。晴れる日はもう何年も来ないだろう事を。気温がどんどんと下がりつづけ、地球は氷に満たされる。陸上の生命は一年以内に絶滅し、また何十万年もかけて海から陸上に上がる生物が生まれるのだろう。


その間に地殻は大変動し、隆起し、ゲートのある場所は山脈になっていた。
故にゲートの出口は山脈内。洞窟の中だった。
まず7人は洞窟から外へと通ずる道を探さなければいけない。
原作設定の様に都合良く出口はなく、洞窟内には魔族の祖先が住んでいた。ジール王国が人造生物の種として使ったサンプル種族である。


ラヴォスの影響で人間は魔力を使える様に進化し、氷河期に適応でき絶滅を免れた。恐竜人は不運にも殆どが絶滅してしまったが、独自の進化を遂げた希少種がいた。知能が低い種族が多かったが、体に多くの魔力を溜め込んでいた。それが魔族の祖先だった。祖先は魔力を都合良く扱えなかった。魔力の応用力が足りず、偏った力を持っていた。例えば寒い氷河期において体温調節機能のみが飛躍的に発達した種が生き延びていて、熱や冷気に強い防御耐性を持っていた。現代においては、その機能が退化した種も繁栄できているとはいえ、この時代の魔族の先祖は進化の途上にあった。その魔族を改造し利用したジール王国は、あらゆる方面で人造兵士として使っていた。原作ではボッシュが幽閉された嘆きの山にて侵入者を阻む様に、海底神殿では警備兵として配置されていた。

魔族の祖先は人間が繁栄を維持する中において生存領域を広げられなかった種族でもある。人間が空に移り住んだとはいえ、海の海産資源はジール王国が支配していた。今は人目を避ける様に洞窟に住んではいるが、ジール王国が滅亡してからは、彼らは急激に繁栄する事ができ、中世、現代の様な魔族へと進化することになる。進化するとはいっても、ジールが改造した人造魔族と、火を扱う人間が社会を牛耳るので生存領域までは広げられない。中世のトルース山やガルディアの森に生息している最弱な種となるだろう。だが、知能が低い分、弱者なのに、あきらめが悪くしぶとくて絶滅しない。まるでディストピアな世界だと判っているのに子作していた未来人の様になるだろう。


〜暗闇の洞窟〜


「ライト!」
ボッシュが魔法で光を灯した瞬間、魔族が目の前にいた。

クロノ達の悲鳴が洞窟に響き渡る。
だが一番悲鳴を上げたのは魔族の方でボッシュは比較的冷静だった。

突然住処に侵入してきた人間に驚き、魔族達は逃げ出した。

「ここはどこじゃろうか…」
ボッシュは風の流れを視覚化する魔法と方位を知る魔法を使い、出口を探した。

マール
ボッシュって変わった魔法が使えるんだね…他に何が使えるの?」

ボッシュ
「ワシはジール王国では生命魔学の賢者と呼ばれおった。回復や蘇生、何でもできるが、個人的に得意なのは魔法道具を作ったり修理したりじゃな。たとえば剣に命を吹き込むこともできるのう。よしんば命を生み出すこともできるのう。グランとリオンという可愛い精霊がいるんじゃが…」


エイラがクシャミをした。露出がはげしくぷるぷる震えている。

ボッシュが魔力で熱を送った、

「お前さんらはワシらから大雑把な魔法のやり方しか教わっておらんから力のコントロールは難しいのかもしれんのう。 基本原理はファイアで、体温調節にも使えるじゃが…  

マール
「力のコントールっていうけど、どうやったらいいの?」

ボッシュ
「そうじゃな…
 魔法を使うとき、魔力が体から抜け出る感覚あるじゃろ? その抜け出る方向ってわかるかの?

マール「体から↑に抜け出る感じかな…


ボッシュ「なら上から下に抜け出る感覚をイメージしてファイアを唱えてみたらとうかの?


マール
「あれ?出ない?…いつもは小さくても炎出せるのに」


ボッシュ
「力をリミットいっぱいまで下げたんじゃ。何も出てない様に見えてちゃんと出とるよ。


マールは自分に向けてファイアを放った。

「ほんとだ! 一瞬体がポカポカになった!」


マールはファイア呪文を連呼した。

ボッシュ
「本来なら無詠唱で魔法は使えるんじゃが、お主ら古代人じゃないからのう…。
 体質的に無理じゃろうな…」

ルッカ
「タイムトラベルをする魔法ってないの?」

ボッシュ
「それは兄、ハッシュの専門分野じゃった。ワシはあまり詳しくない。ワシが知ってるのはせいぜい未来への擬似的ワープくらいかの…。

ルッカ
「ワープ?」

ボッシュ
「スロウ系魔法があるじゃろ? 空間に向けてスロウを重ねがけして、その空間の時間の流れを極端に遅くするんじゃ。その中に入れば、外の世界は早いスピード進むことになる。これがある意味での擬似タイムトラベルじゃ」

ルッカ
「へー。じゃあ、原始時代から帰れなくなっても大丈夫そうね…」

ボッシュ
「かなりの魔力を使うからのう。巨大な魔法陣でも描いて代用魔力を得ないと実用性がないのう。』

ボッシュ達は洞窟を抜けた。
一面雪の降る世界。ボッシュにとって懐かしい景色。


ボッシュ
「あ、あの光の柱は!」

白い世界で、天から伸びている光柱を見てボッシュは喜んだ。

「良かった! 天空都市は健在じゃ!」

「なんじゃ〜
 ビビらせおって! 
 未来の映像は所詮未来の出来事。
 これでジール様に胸を張って報告ができる


 後はダルトンの問題だけじゃが、奴が王宮をどの様に私物化しておるのか、考えるとゾッとするのう。」

〜入国管理局〜

「武器はここであずかりますので…」


ボッシュ
「ご苦労さん」

担当者
「やや! ボッシュ様ではありませんか! 失礼しました。どうぞこのままお通り下さい…」


〜王宮〜

「おい爺!」

「はい、なんでごさいましょうかジャキ様」
振り返り、いつもの癖で反射的に答えたボッシュ
ジャキはタイムゲートに巻き込まれて中世で魔王の仕事をしていたはず。なぜ、どうして、と
ボッシュの頭は混乱していた。


「爺! 服がボロボロじゃないか! そんな姿で王宮をウロウロするとは教師の恥だぞ!」

「あと、そこの女! ほとんど裸姿じゃないか! 一体王宮を何だと思っているのだ! おい爺、聞いているのか? 早く女を連れて行け」

「申し訳ありませんジャキ様、直ぐに着替えてまいります」
ボッシュはいつもの癖で応対した後、エイラを世話役に預け、自身の部屋へと向かった。

ジャキはロボを珍しそうに見ながら、あちこち触っていた。


「姉様ー!」
ジャキはサラを呼んだ。面白そうな玩具を早く教えてあげたい。

「どうしたのジャキ」
サラが奥から出てくると、クロノ達に挨拶をした。
 

サラ

「皆さんは異国の方でしょうか?」

マール「え?どうして?」

サラ
「お召し物が見た事ないものでしたので」


マール
「え、えと、私達遠くの所、ガルディアから来たのです」

サラ
「ガルディア…
 ああ、あの国ですね。あの国は…
 良い所ですよね〜」

サラは王宮の鏡でもある。。メンツを重んていて『知らない』とは言えず、話を合わせた。


ボッシュは部屋で着替えていた。
4着ある筈のいつもの作業服が1着ない。
ボッシュはカレンダーを見て思い出した。この時代のもう一人の自分の存在を。

もう一人のボッシュは今、ラヴォス実験に備えて、いざという時の為に魔神機を破壊する剣を作っていた。
ラヴォス実験は2日後に迫っていて、この時代のボッシュは急いで作業をしている。

ボッシュは作業室へ走り、もう一人のボッシュと対面した。



「そうか…つまりお前さんは未来から来たのか…」


ボッシュ
「そうじゃ! 実験は失敗して、大変な事になる。未来で見たラヴォスは世界を破滅させたんじゃ。」

ボッシュ
「そうはいうが、ここは天空都市じゃぞ。ラヴォスが世界を破壊するとしても、この高さまで届くとは思えんが…

ボッシュ
「確かにそうじゃけど…」

ボッシュ
「お前さんも知っているじゃろうが。我らに選択肢ない。ダルトンとその背後にいる奴らの意には逆らえん。やるしかなかろうが。

ボッシュ
「確かにそうじゃけど…」

ボッシュ
「タイムゲートに飲まれたとして、助かるんじゃろ? ならそんなに深刻には…」

ボッシュ
「兄さん達は死んだのだぞ!」

ボッシュ
「だったら、魔神機に剣刺したら直ぐに逃げれば良いじゃろうが。タイムゲートにまきこまれる前に。」


ボッシュ達はガッシュとハッシュの元へ行った。


ガッシュ、ハッシュ
「まさかワシが死ぬとは…」

ボッシュ
「兄さん達はどう思う?」

ガッシュ
「未来に行きタイムマシンの様な物を作る…」

ハッシュ
「記憶はないものの、時の案内人みたいな仕事…しかもオシャレな服とステッキか…」

ハッシュ、ガッシュ
「楽しそうじゃないか!」


ハッシュ「冗談じゃよ。だがな、実験を止める訳にもいかんのじゃよ。
 止めることができぬなら、やるしかない。要するに避難するとか、実験が失敗したときの対策をすればええんじゃろ?ボッシュ二人でならダルトンを説得する事はできんかの? タイムマシンで未来を見せるとかで。」

その瞬間、クロノ達とボッシュの身体が光輝いて透明になった。

ボッシュ
「身体が消えそうじゃ…」

ガッシュ
「何が起こっている?」

ハッシュは考え込む。
「恐らくこれは、時の流れに逆らって歴史を変えようとしているから…かもしれん。
 ボッシュがタイムゲートに飲み込まれたからこそ、今こうしてボッシュはここに存在している。もしゲートに飲み込まれない世界を作ったら未来からきたボッシュの存在は無かったことになる。」


『魔神機実験をしなければならない。』
そう決断したとき4人から光は消えた。


ハッシュ
「それが運命というなら、やらねばならんのかのう。


ガッシュ
「うむ。そのようだ。

ボッシュ
「…

ハッシュ
「未来から来たボッシュ。お前さんができることは出来るだけ民を安全な所に避難させる事じゃ。

ガッシュ
「もし大陸が海に落ちたら大津波が起こるだろう。海岸沿いの地の民を避難させねばならん。


ボッシュ
ラヴォスが暴走するにしても、ワシは念の為に赤い剣を作るよ。
 そしてまたこの時代へと皆に会いにくるよ…

未来のボッシュ
「1つ方法がある。
 未来のサラ様とジール様を連れてきて、みんながゲートから消えた後、ワシらがラヴォスと戰う。
 サラ様がラヴォスの力を押さえ込みつつ、ジール様が魔法で応戦する。」

ハッシュ
「それだと死の危険が伴うのてはないか?」

ボッシュ
「分からぬ。もしかしたらまたタイムゲートに飲み込まれるかもしれん。
 でも、せっかく築いたこの国を諦めたくないのじゃ。」

ガッシュ
「実質ダルトン政権なのにか?

未来のボッシュ
「天空都市が有ろうが無かろうとダルトンみたいのは多くいる。どのみちこのみちじゃよ」


ダルトンについて~

ダルトンは海底神殿以外にも人造魔族に関する陣頭指揮も取っていた。それ以外にも極秘裏に研究している事が多くはあり、配下が無数にいた。
その全容はジールですら把握できていなく、しかしいつでも王家を転覆させる力が有ることだけは判ってた。だが地球を一撃で破壊できる程の魔力を持っている事は誰も知らない。ダルトンは陸から上がったラヴォスに寄生されていた。そのラヴォスは原始時代より以前より地殻にいて力を蓄えていた。力を細かいレベルでコントロールでき、大きな魔力気配も隠せるバリアを身に纏える。知的レベルは寄生した人間に依存する性質があるが、ダルトンそのものものポテンシャルの高さから、ラヴォスの力が引き出されていた。

ラヴォスダルトンの目的は人間観察だった。人がどの様な動きをするのかを試していた。いつも人前でバカな演出をするのは自分の強さに酔いしれての余裕からくるものであり、ちょっとした遊びだった。原作では死に様が喜劇的になるのもそれが理由だった。死んだふりで驚かすのが楽しかった。


ダルトンラヴォスは、もう一体のラヴォスが目覚めたとき、、人間がどの様に立ち向かうのを観察したかった。

不老不死が実現するというハッタリにジールが騙されていくのも興味深い現象だった。
ジールは勝手な被害妄想をしていた。ラヴォスを目覚めさる事業をしていれば、その制御に必要になるサラの存在価値が上がり、ダルトンによる王家転覆計画が阻止されると思っていた。ジールが暴君としてジャキや従者に傍若無人に対応するのも、人質としての価値がない様にダルトンに魅せる為の演技だった。


ボッシュは中世に戻り、現状の王宮を報告した。

サラ
ラヴォスと戰うって? ボッシュ本気で言ってるの? 

ジー
「正直、わらわも勝てる気がせんな…」

ボッシュ
「未来での映像を思い出してみてくだされ。
 ラヴォスは体から光を空に向かって攻撃を放つ…
 要するにラヴォスの上に居なければ安全なのではと。
 タイムゲートはラヴォス近くで発生するとして、ラヴォスから離れて遠くから魔法で攻撃するのです。
 もし危険と判断するなら、予めワープゾーンを足元近くにおいて、そこから逃げるのです。」

サラ
「なるほど。それなら…

ジール王
「まだ不安があるがな…

サラ
「魔族に助力をお願いしてみるのはどうでしょうか。戰うことが好きな魔族は多くいます。ソイソーやマヨネー、ビネガーも頼もしい戦力になるかもしれません。


☆「時の流れに反してはいけない」ハッシュの言葉

未来でラヴォスの脅威を知ってそれを前提として過去のラヴォスを倒すことはできない。。ラヴォスが過去で死んだならば、ラヴォスを知る原因となった未来がないからラヴォスの存在そのものを知らない状態になる。つまり過去でラヴォスを倒すこと事は成立しない。

この仮説はクロノの視点ではそうなるだろう。だがサラやジールの視点でみれば、未来のラヴォス災害を知らなくても、ラヴォスと戦うシナリオは成立する。ガッシュラヴォスが荒廃させた未来に行こうが、ラヴォスの存在しない未来に行こうが、元の時代に帰る為にシルバードを開発しようとするだろうし、古代人へのメッセージを残すだろう。
細かい矛盾はあるけれど、大枠ではラヴォスと倒せるシナリオはサラやジールにある。わかりにくいけど。

基本的にはラヴォス破壊は、未来においては可能だが、過去ではできない。
にも関わらず、ボッシュ達は光に包まれないのはどういう意味か。
以外2のどれかしかない。


1,ボッシュ達はラヴォスを倒せない
2,ボッシュ達はラヴォスに殺される


ボッシュは【避難活動が一番確実である】気がした。
ラヴォスが未来でしか倒せないのなら、未来で倒せばいい。
1999年までに、人々を未来2300年向こう側に移住させる。そこを新たな住処として開拓すればいい。

1000人が収容出来るような巨大なシルバードを作り、人々を未来に連れて行く。
砂地になった未来を復興する。
天の民の多くが古代からいなくなれば歴史の繋がりは保てるので、クロノ達現代人も生まれてこれる。


この考えを聞いたジールは古代へと向かった。ラヴォスを倒すのではなく、ラヴォスから民を守るのを使命とした。


ジールは大陸の中央に特大の魔法陣を描き呪文を唱えた。
吹雪の寒い世界で、その空間だけが、温かくなる。そこに人が集まれる様にテレポートスポットを設置した。
皮肉な事にこの動力源の多くはラヴォスだった。ジール達はラヴォスが目覚めた後ではラヴォスがエネルギーを吸いとれない事を知らなかった。魔方陣についてもだ。古代人が利用している魔方陣は自然界からエネルギーを得ているがそのエネルギーの多くが地面にいるラヴォスだった。ラヴォスが目覚めた瞬間から、あらゆる防衛戦略が機能しなくなる。

ジールの得意な魔法はハレーション。
ハレーションを受けた者は体力1になり、瀕死の重症になる。
しかし動けなくなる訳ではない。戦闘できるスタミナはちゃんと残されている。しかしダメージを受ける恐怖は大きい。動けなくなったら倒れている間に誰に何をされるか判らなくて不安になる。この不安を解消するにはジールをどうにかするか、回復アイテムを常備しないといけなくなる。

ジールは国全体にハレーションを振りまき、弱った人々に、脅しのアナウンスをした。
「わらわのハレーションを受けたくないなら、、地上に逃げるしかないぞよ」

ラヴォスが暴走すると言っても信じない者や、天空だから安全だと思い込み、逃げない者がいる。そう考えたジールはハレーションを使った。

空飛びつつハレーション
 虹色の環が広がる。

ラヴォスが暴走して天空都市がなくなる。ので、ハレーション!」

ラヴォスが私のせいで目覚めてしまいますよ。ハレーション!」

ダルトンが悪い! ハレーション!」


「皆の者よく聞け、わらわは、未来を見てきた。

未来はとてつもなく、ひどい世界になっている。

生きている人々は皆、困っている。

わらわは思った。恵まれてるそなたらなど、どうでもいい。

苦労知らずのお前たち等どうでもいい。

わらわは未来で王になる。

こんな時代、ダルトンにくれてやる。


わらわの苦労を知らぬ者は死んでしまえ」

ジールについて暴君なイメージしかない国民にとって、ジールは乱心している様にしか見えないだろう。
たからこそ、ハレーションの効果があった。

「おいそこ! 地の民をシェルター(温暖区域)から追い出したな! 後でハレーションを浴びせるから覚えとけよ!」

「地の民をいじめた奴は皆ハレーション地獄を味わわせてやる。」


ボッシュとサラはバリア用の魔法を準備していた。

「サラ様が地の民を守ろうとしている!
ラヴォス神が世界を破滅させるのは本当なのかもしれない!」
「サラ様だけに任せる訳にはいかない!」
「オレも!「私も!

ラヴォス防衛に必要なエネルギーが貯まる。しかし、魔方陣を使ったエネルギー補てんはラヴォスが目覚めた瞬間に殆ど機能しなくなる。

〜海底神殿〜

ボッシュ
「兄さん達、また会いましょう!

ハッシュ
「じゃ、時の最果てでな!

ガッシュ
「ヌウとして!

程なくして海から光の柱が天を貫いた。

光の雨が大地に降り注ぐ。

雪の地面が溶けていく

地響きで立っていられない地の民。魔法使い達は力を加減しながら浮いていた。
砂煙で周りが何も見えなくなっても、ラヴォスの衝撃はシールドを通し、空気の振動として内部に伝わる。

耳を塞ぎ、蹲る人々。恐怖で怯える。

5分経過
景色は見る影もなく崩壊し、山々の輪郭が変わっていく。
ラヴォスは変化なく、光の攻撃をしている。

10分経過
ラヴォスは変化なく、光の攻撃をしている。
ジールもサラも汗を流した。
体から出るオーラの流れ長い髪が上になびく。
周りを見る余裕はなく、目を瞑り集中する二人。
山々は蜂の巣の様に穴だらけになっていく。


更に10分経過

大地はめくりあがり、ジール達のいる足場以外は谷の様になった。


高さ1000mの高台になる。原始時代の高さ8000mの高台もこの様にできたのかもしれない。

多くの山々は崩れ落ち、そこを住処にしている魔族も多くが死に絶えるだろう。
海は大地を侵食し、入り交じる。
魔法使い達は疲労を貯め、目が虚ろで視線が定まらない。
魔力は殆ど使い果たして、意識が朦朧としている。
ドーピングの魔法で意識を繋ぎ止める。
だが一人、二人と、次々に力尽きて倒れる。


地の民は無力だった。サラやジール、その他の魔法使いを心配することしかできなかった。

更に10分が経ち、バリアシールドがボロボロになる頃、魔法使いで立っている者は殆ど居なかった。サラもジールも同様に魔力が尽きて倒れた。

ラヴォスの攻撃は未だ収まる気配がない。
このままでは皆が死に絶える。

「お、お母様…このままでは…

「わ、わかって、おるわ…」

ラヴォスの攻撃は生命の7割を絶滅(陸上の生物は全滅)させるエネルギーがあった。

サラは思った。この時代に戻ってきたのは偶然ではなく必然なのだと。
ラヴォスゲートに飲み込まれた後、人々はラヴォスの攻撃で死んだ。
未来に王国の歴史を語り継げる者が誰一人居なくなるまで殺されてしまったのだと。

全てはラヴォスを覚醒させる実験から生まれた悲劇。自分達の責任は免れない。

人々は実験を強行した王宮を恨みながら死んでいき、その魂の無念を晴らす為に自分達をここへ導いたのではないかと。罪を悔いて反省するか、さもなくば責任を取ってラヴォスを倒せと。それが無理なら命を駆けて人々を守れと。
みんな死んだのだから、今度はお前が死ぬ番なのだと。

【お前達が私達を殺したのだから、今度は私達がお前達を殺す番だ】

サラ
(お母様…この惨状を招いた私達は途方もなく罪深い…)


ジールはサラが何を考えているかは分からなかった。しかし、きっと物事をわるい方向に考えて絶望しているのだと思っていた。

ジー
(わらわは思うぞ。わらわがラヴォスを呼び覚まさなかったら、ラヴォスはしっかり睡眠時間をとり、未来で目覚める時間が前倒しで早くなるだけじゃろうと。)

ジー
(余計な事は考えずとも、やれることはもう少ない。魔力はもう無いんじゃ。すっからかん。後は運を天に任せるのみぞ…)


ジールはサラを見て笑った。

サラ
(こんな時に笑うなんて、やっぱり私、お母様の心なんて分からないや…)

サラもジールに笑顔を向けた。


ラヴォスの光はバリアを貫き、人々を巻き込んだ。
サラとジールも巻き込みながら…

「まだ、まだ、終っとらんぞ!」
ボッシュは透明魔法を解除した。そばに隠しておいたシルバードを起動し、サラとジールを乗せた。

ダルトンはその光景を見ていた。

「やらり人間はこの程度か…」

そう呟いたダルトンラヴォスの光が直撃した。

ダルトンは無傷だった。

ダルトンは何かの呪文を唱えた。

その瞬間、時が止まった。

ダルトンはサラとジールに歩み寄ると手をかざした。

タイムマシに乗りこんだサラとジールの体は光に包まれ消滅した。


気付くとサラは見慣れた場所にいた。ラヴォスの攻撃に備えてバリアを張る予定の安全地帯にいた。ジールも隣にいてハレーションによる避難誘導が終わったばかりの状態で、まもなくラヴォスが暴走を始める時。

腰が抜けた様にサラは倒れ、、ジールもまた同じ様になった。

サラとジールは同じ気持ちを察した。これから起きる未来を見て絶望していた。

ジー
「い、いまのはどういうことじゃ? わらわは未来を見てきたのか?」

サラ
「なぜかは分かりませんが、私達は過去にタイムリープした様です。」

未来での記憶を過去に引き継ぐ現象、タイムリープ
魔学の歴史にもその様な現象の記録は残っていない。
夢が幻か、もしこれが未来視としたら、ラヴォスとは正面から戦えという暗示かもしれないと二人は察した。


ラヴォス戦、海底神殿〜

サラはペンダントの力を使い、ジールと共にラヴォスの眼前にテレポートした。
サラはラヴォスの頭に触れた。ラヴォスに意識を繋げ、ラヴォスが眠るように暗示をかけた。
ジールはラヴォスからの攻撃に備えてサラと自身にバリアを張った。ラヴォスの光の攻撃で神殿の天井に穴が空き、海水に押しつぶされる事に備えた特別仕様のバリアだった。

バリアを作り終えた瞬間、ジールはラヴォスに心を乗っとられていた。

ラヴォスには生物の意識に繋がり、操る力があった。その能力はある意味サラと似ていた。


だがラヴォスジールに意識を繋いだとき、ラヴォスジールの心を共有した。
ジールの国民を守りたいという純粋な感情、一度は守りきれず失った悲しみと絶望。
ラヴォスは敵であるジールの心を支配するつもりが、ジールの強い念に協調しそうだった。

ラヴォスの意識とジールの意識がせめぎ合っていた。

ラヴォスは世界に向けてブチかましたい。ジールはラヴォスから人々を守りたい。
互いにラヴォスエネルギーを奪いあう様相になる。

ラヴォスは天に向けて力を放つも、ジールはラヴォスエネルギーを使い神殿で攻撃を防ごうとする
物質変化の術を神殿にかけたジール。その術に意識を集中し、神殿を変形させ、ラヴォスを包み込もとうする。

ラヴォスは神殿に包まれる。光の攻撃で神殿の天井を破壊するも破壊した部分からすぐに神殿は再生していく。

ラヴォスエネルギーを用いた神殿はラヴォスの攻撃を鉄壁にガードする存在となった。

ジールはラヴォスを人のいない遠くに追いやりたい。

神殿はラヴォスを抱え込んで浮上し、空へと進む。

このまま空の果てに連れて行くつもりのジール。

だが、いずれ自身は寿命で死ぬ。ラヴォスの寿命は果てしなく長い。寿命があるのかさえ判らない。いずれラヴォスを支配できなくなって暴走を止められなくなる。それを解決するにはジール自身の意識を神殿内に閉じ込め、神殿と同化する事でラヴォスと意識を繋がり続けさせるしかない。
ラヴォスを支配できている今の内にラヴォスエネルギーを抜き取れるだけ抜き取る必要があった。

そのエネルギーでジール神殿はラヴォスが容易には抜け出せない程の硬い質へと変化した。ラヴォスを未来永劫、神殿内に封印できることを期待して、また、誰かがこの封印を解かない様に神殿への侵入者、外敵を排除できるように要塞になる形に変形させた。

サラはジールが神殿になるのを止められなかった。
サラがラヴォスと意識を繋ぐというのは、ラヴォスが意識を繋いでいるジールともまた繋がるということ。ジールの気持ちが判りすぎていた。

「お母様、有難う。」
サラはジールに感謝と別れ告げると、この状況を民に説明する為、国へ戻った。