クロノファン2022

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アザーラには多くの超能力があった。(アザーラ鬱展開)

念力(サイコキネシス)、瞬間移動(テレポート)、テレパシー(思考妨害)、そして未来予知ができた。未来予知に関してはラヴォスの飛来後に恐竜人は絶滅してしまうだろう事。隕石から自身が逃げたとしても、治安の低下と暴動で恐竜人社会は混乱し、ろくでもない未来が待っている。高確率でクーデターにより処刑される未来が見えていた。超能力を駆使すれば、それらの不幸を避ける事もできるだろう。けれど権勢はもう維持できない。生きていても、むなしい人生が待っているだけだった。

アザーラは先祖の地(奇跡の城)を死に場所に決めていた。キーノを誘拐し、猿のリーダーであるエイラ達を誘き寄せ、共に心中するつもりだった。計画通りに成功する未来が見えていた。アザーラにとって予知が外れたのはこれが人生で最初で最後だった。

 アザーラは渡り廊下を背にしていた。エイラを迎え撃つ為に。だが、アザーラにとって背後にある塔の中はエイラ以上に重要だった。恐竜人の英知が詰まった遺産があった。たとえそれがラヴォスと共に消えるのだとしても下等な種族である猿に穢れさせたくなかった。竜の首輪を外せば猿が隙間から侵入するかもしれない。鎖を外して闘わせる事もできたが…

 アザーラは念力で先祖の遺産を起動した。吹き抜けの天井に見えないバリアが張られ、プテラが着陸できなくなる。

 エイラとキーノがクロノ達に先だって到着した。屋上の酸素濃度は地上の半分であり、二人の呼吸は乱れていた。

 アザーラにとって人質キーノは殺して捨て置く事もできた。あえて生かしておいたのは、この戦いで無力な猿である事を実感させ、悔しがる姿が見たかったからだ。

アザーラはキーノにサイコキネシスで呼吸をできなくさせた。

苦しむキーノ。エイラはアザーラに飛び込んだ。竜が回転し、エイラをふっ飛ばした。

エイラは橋の下に落ちるかと思いきやそこにもバリアが張られていた。叩きつけられる様にエイラは倒れた。

既に竜は火を溜め込んでいた。アザーラの指示でいつでも竜は火を吐き、廊下を火の海にできる。
そこにクロノ、マール、ルッカ、ロボが到着した。
ロケットパンチ、ファイア、アイス、サンダーが飛んで来るが、。アザーラには先祖の遺産であるバリアシステムが張られていて、全く攻撃が通用しなかった。アザーラにとってクロノ達は弱すぎて、相手をするまでもない存在だった。




アザーラは竜に指示を出した。廊下一面に炎が蒔かれていく。炎はエイラとキーノを避けるようにしていた。
アザーラは二人を殺すつもりはなかった。敗北の絶望、無力さを感じさせたかった。
炎は二人を取り囲み、その場から出られなくなる。
アザーラは、念力を解除し、キーノを自由にした。
呼吸を整えエイラを抱き起こすキーノ。

もうすぐラヴォスが到着する。それまでアザーラは、やりたいことをやると決めていた。

アザーラは竜を操作し、城の破壊を始めた。竜を回転させ、至るところを破壊していく。クロノ達の事はどうでも良いかの様に。

実際どうでも良かった。恐竜人の文明の凄さを猿に知らしめる事がアザーラの目的だった。それは既に達成し満足していた。当初は先祖の遺産を猿から守るつもりだったが、改めて考えてみると無意味たと思った。猿に使いこなせる筈もなければ理解する頭もないのだろうと。

アザーラは先祖が守り続けた象徴を破壊し尽くし、再び、渡り廊下へと戻ってきた。

エイラ
「わけがわからないぞ」

「もうすぐ…わかるさ」
アザーラはそう言って空を見つめていた。




エイラは戦いを仕掛けようとしたが、アザーラの強さに怖じけづいていた。




『ここから逃げるチャンスをやろうか?』

ふとアザーラはエイラに提案した。まだ少し弄べると思った。


『今、天井のバリアを解除しておいた。逃げられるものなら逃げてみろ。』

どういう意図なのかエイラには理解できなかった。罠があるのかないのか図りかねていた。

『どうした?早くここから逃げないと死ぬぞ?』

エイラは逃げなかった。元よりエイラにはアザーラに伝えたい事があってここに来た。人間と恐竜人との共存についてである。人の言葉を理解できる恐竜人はアザーラ一人しかいなかった。アザーラさえ恐竜人を束ねてくれれば無益な争いをしないで済む。

アザーラはエイラの言葉を静かに聞いていた。予知能力でエイラの吐く台詞は予め知っていたものの、改めてその台詞を聞いてみると今の心境のアザーラは心が揺れていた。

竜人と人間が共存する世界は困難が付きまとう。最初は上手くいくだろうが、氷河期が迫るほど、食糧に困り、互いに共存の道筋は絶たれる。寒さを凌ぐ為に暖をとるにしても、森数は限りがある。森さえ維持できない氷河期が来る時、やはり互いに殺し合う運命からは逃れられない。言い分けするつもりはないが、これらを説明したところで、互いにどうにもならない問題だと思っていた。繁殖を止めて人口数コントロールしたとしても、対応しきれない程に早いスピードで氷河期が訪れてしまい、互いに生存競争を強いられる羽目になる。もっと前から予知ができていれば準備もできただろうが、今更どうにもならない。

アザーラは空を見ていた。アザーラの目に浮かぶ赤色にはエイラもキーノもまだ気づいてなかった。

ロボのセンサーがラヴォスを探知した。

ロボ
「皆さん大変です。空に…ラヴォスがいます。

クロノ達は、上空に小さな赤い光りを発見した。

ロボ
「予測約、直径1km、質量80億トン、時速5万キロのラヴォスがここへ落ちてきます。」

ルッカ
「え!? どういうこと、? ラヴォスって隕石かなにかなの??

ロボ 
「グズグズしているヒマはありません!
 ラヴォス衝突まで後60秒しかありません』


キーノ「エイラ! プテラの様子がおかしい。」「プテラ、危険の合図している。ただ事じゃない危険、迫っている。ここに居たら危ない!」

エイラ「アザーラ! お前もこい!」



訳が判らないエイラだが、この場所に危険が迫っているなら尚更アザーラを見捨てる事ができなかった。

アザーラはピストルを取り出し、エイラに向けた。




プテララヴォスの危険を察知し、エイラの指示を聞かずに飛び立った。
アザーラがエイラの視界から消えていく。

アザーラはピストルを天に向けて放った。


「いい、音だな…」

アザーラはこの城と共に消滅した。
ラヴォスは地球深くにえぐり込む様に侵入し、巨大なクレーターを生み出した。

クロノ達はラヴォス衝突の衝撃波に煽られた。音速を越えた衝撃波にプテラはふっとばされていく。それに振り落とされない様にしがみつくので精一杯だった。

ラヴォスの衝突で地表は一瞬で蒸発し、気体とも灰ともいえない微粒子が上空に巻き上げられる。
クロノ達もその灰に巻かれながら、何も見えなくなる。何がなんだか訳が判らないまま遠くへ吹き飛ばされた。